帝人受け

□黒猫と帝人
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「驚きすぎだよ、二人して」
「ま、まさかご本人さん登場なんて展開は予想してなかったっす」
「いや、二人が道端でしゃがんで騒いでるから……。ふーん、黒猫かぁ。まだ小さいから子猫かな? ほらほらー」

正臣の手から猫じゃらしをいつの間にか奪って遊んでいた。
上下左右にほいほいっと軽快に動く猫じゃらしを黒猫は夢中で追いかけている。
正臣と僕はまだ唖然としたままだった。
けれども、正臣が意を決したように口を開いた。

「い、臨也さんって猫をあやすの上手っすね」

あっ、それ僕も思った。

「たまたま依頼人から子猫を預かった時があるんだよ、ちょうどこの猫ぐらいのね。
 俺自身、動物好きだから。まぁ動物に接する人間を観察するのが好きなんだけどね」

あっ、新羅に人間も動物も一緒だって言ってたなぁ。
よく人から猫みたいって言われるけど俺ってそんなに似てるかな?
珍しく自分について長話をする。
こんな表情で接するんだ……。
猫と戯れている臨也さんの横顔につい見惚れてしまった。
素の臨也さんを垣間見た瞬間だった。

「じゃあそろそろ行くね」

何事も無かったように去っていった。
臨也さんの後ろ姿を見送っていると、猫が僕の足元に擦り寄って、見上げていた。
目と目があうと一声、にゃーと鳴いて、塀を乗り越え何処かへ去ってしまった。

「あーあ、猫いちゃったー」
「ホント気紛れだな」
「僕達も帰ろっか、正臣」
「おう! 帰ろう」

歩みを再開した僕達だった。
けれども、幾分前を歩く臨也さんが振り返り何か言っている。
というよりは手を振りながら叫んでいた。
何を言っているんだろう……?

「帝人くーん! 言い忘れてたけど、君の方が可愛いからー!! じゃーね!」

気紛れな猫か……。
思わず笑みがこぼれた。


-END-
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