帝人受け

□天使を連れて帰ってきました
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玄関の扉の開く音が同居人の帰宅を知らせた。
新羅は白衣をまとったまま、いそいそと出迎えた。

「おかえりーセルティ……」

身体のラインを強調する黒のライダースーツにフルヘルメットのセルティが靴も脱がずに突っ立っていた。
違和感を覚えたが、セルティが“何か”を背負っていることに気付いた。
“それ”はもぞもぞと動き出し、ぴょこんとセルティの肩越しに頭を出した。
短髪で黒髪の幼い2、3才の男の子だった。

「って、ええー!? 何で子供! え、誰その子! もしかして誘拐!?
  そんなに子供が欲しいなら私に言ってよ。ごめんねごめんね僕の努力不足だ!」

息を荒くして一気に喋りあげた。
セルティは慌ててその子供を降ろし、パッドにすばやく言葉を打ち込んだ。
ずいと新羅に見せつける。

『違う!話を聞け!とりあえず落ち着いてくれ!誘拐とかじゃないんだ!』

ずれた眼鏡を掛け直した。

「で、誘拐でないなら何があったの?
  まさか猫みたいに捨てられたのを拾ってきたわけじゃあるまいし」

彼女の足を掴んで立っている幼児をちらりと見下ろした。
大きなまん丸い目でこちらを見ている。
目が合うと、その子はおどおどしながら挨拶をしてくれた。

「こ、こんにちは」

出だしの声が裏返っている。

「こんにちは」

新羅も返すとその子は少し緊張が解れたのか初めて笑顔を見せた。
その笑顔にデジャヴを感じた。
どこかで会っただろうか。
記憶を遡っても、こんな幼い知り合いはいなかったはず。
新羅が思い悩んでいる横でセルティは打ち始めた。
なんと言おうか思案して、言葉を紡ぐ。

『どうやって説明したらいいか分からないが、単刀直入に言う。この子は…』

新羅は唾を飲んだ。
彼女は一呼吸置き、続きの言葉を継いだ。

『帝人なんだ』

「は……?」

新羅は目を見開き、もう一度読み直す。
そして、やっと理解した。
目の前にいるこの男の子は、よく知っている人物だったのだ。

「ええー!! みみみ帝人君!?」

新羅は本日二度目の驚きの声をあげた。
もう一度まじまじと見た。
帝人をそのまま幼くしたような感じだった。


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