帝人受け

□香水と抱き枕
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学校帰り、一人で歩いていた帝人は遊馬崎と狩沢に声を掛けられた。

「帝人君じゃん」
「奇遇っすね」
「こんにちは」

二人は路肩に停めてあるワゴンに寄り掛かって手招きをしている。
足元にはたくさんの紙袋がある。

「今日もすごい買い物ですね」
「実は、デュラララ公式グッズを色々買い揃えたんすよ!」

遊馬崎がマウスパッドなどを取り出した。
実は帝人もクリアファイルやキーホルダーといった類は持っている。
数々のグッズに三人で盛り上がった。
そして、狩沢が大きめの鞄から取り出したのは抱き枕だった。わざわざシーツもつけている。

「これ……気になってたんですよ。臨也さんのもあるんですよね」
「これがそうよ。この前カラオケに付き合ってもらったし一つあげるわよ」
「ええ! そんな貰うだなんて」
「私は帝人君に貰ってほしいから」

と無理矢理、帝人に渡す。
でかでかとプリントされた枕を抱えた。
(うわ……結構恥ずかしいな……)
意外と枕の抱き心地は良い。

「でね、香水も出たのよ」
「あ、臨也さんが使ってるものと一緒の匂いなんですね」
「おいしい発言ありがとう。でね、その香水をただ付けて楽しむだけじゃなく……」

シュッシュッと枕に軽く吹き付けた。
さてどうかな、と狩沢が爛々とした目でたずねた。
帝人は恥ずかしそうに目を瞑り、ぼふっと顔をうずめた。
ふんわりと安心感のある匂いに包まれる。

「ん、匂いがする……。でも」
「でも……?」

顔を枕から上げた時、後ろから勢いよくがしっと抱きつかれた。

「やあ、帝人君」
「い、臨也さん!?」

見られたのではないか、と驚きと恥ずかしさで顔を赤らめる。
この場から逃げようと試みるが、臨也がそれを許さない。
機嫌良く口笛まで吹いている。

「離してください」
「んー帝人君が道端で可愛いことしてたから、離さない」
「これは……」
「私が帝人君に一つあげようと思って」
「ふーん。シズちゃんの枕だったら、八つ裂きにしてるな」
「人のものですよ!」
「帝人君が悪いってことで。現実に素敵で無敵な情報屋さんがいるのになぁ」
「だって……」

俯いてきゅっと枕を抱き締めた。

「臨也さん、忙しくてあまり会えないでしょう」

勢いよく、ぐいっと枕を臨也に押し付けた。
臨也は目を丸くしたが、にこりと微笑んだ。
帝人は真っ赤に染めた頬を膨らませながら、スタスタと足早に去って行ってしまう。
入れ違いに門田が帰ってくると抱き枕を持った臨也に声をかけた。

「臨也か。久し振りだな」
「なんだ、ドタチンか。これいらないや、あげる」

飽きたおもちゃを押し付けるように、門田に放り投げた。
それを慌てて受け止めた。
門田は横目で帝人の後ろ姿を見ながら言った。

「あんま心配かけさせたんなよ」

まるで今まで見ていたかのような口振りだ。
一瞬、情けなさそうな笑みを浮かべたが、何も言わず帝人の後を追う。

「もう知りません! ついてこないでください」
「今日はもう予定がないから、一緒に行こうよ」
「……分かりました。今回だけですよ」

門田はやれやれと溜め息をついた。
そして、並んで歩く二人を暖かく見送った。

「ムカつくぐらいリア充っすね。ってあれ?」

狩沢の姿が見えない。
辺りを探してみると、電信柱に声も出ないぐらいに頭を叩きつけて萌えに悶えていた。


-END-

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