短編集

□報われないこの恋
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注意:
三角関係Aから思い浮かんだ小説です。

・静→臨,臨→帝,帝→静(三角関係)
・死ネタ&流血表現アリ
・切ない
・帝人君が狂ってます,歪んでます

無理な方はGOウエスト、です。
おkな方はスクロール↓です。




















俺は今、夜の街を全力疾走で駆け抜けていた。
向かう先は新羅のマンション。
早く逢いたい。たとえそれが―――
途中、ぶつかった人に悪態をつかれたが無視して走った。
なんとしてでも、新羅の言葉を頭から追い払いたかった。
とにかく、走って、走って、走りまくって足がつぶれたら事実が変わる、と自分に言い聞かせて。
そして、新羅のマンションに勢いよく駆け込んだ。


―――数分前

なんだか くさいんだよなァ

今日は嫌な胸騒ぎを感じていた。
仕事中に入った一本の電話。
着信相手は新羅だ。
またくだらない用件だと思いぶっきらぼうに出たが、新羅は暗く、重々しい口調で言った。

「静雄……実は

 臨也が死んだ」

その言葉を聞いた瞬間に俺の頭の中は真っ白になった。
状況が理解できなくて、頭がパニックになる。しかし、手に持っていた携帯を放り出して、足は自然に新羅のマンションに向かっていた。

『臨也が死んだ』

化け物なみの怪力を持っている俺と喧嘩しても絶対に死ななかったアイツだぞ!?
絶対嘘だ、嘘だ、嘘に決まっている。
きっと、アイツのことだ。俺を驚かせるために、新羅も一枚噛まして、死んだフリをしているに違いない。
きっとそうだ。新羅の家に着いたらまっさきに殴ってやろう。そして、怒ってやろう。

―――死んだフリなんかすんじゃねぇ!!

そしたらアイツはなんて言うんだろうなぁ。

―――ハハハッ、シズちゃんびっくりしたぁ?ぷっ、変な顔ー

俺の顔を見てケラケラ笑うに違いない。
それで、俺が怒って

―――本当に死んだかと思っただろ!ったく、心配させやがって……

―――へぇ、心配してくれたんだ。第一、俺はシズちゃんの息の根を止めるまで死ぬわけないよ

そして、またいつものように殴って、逃げて、喧嘩して、俺の日常になるんだ―――




新羅のマンションに勢いよく駆け込んだ。
ドアを思い切り開けて、真っ先に臨也の側に駆け寄った。

さっきまでの空想というべきか妄想というべきなのか、そんな想いも届くはずは無かった。
信じたくは無いが、これは紛れもなく現実だった。

臨也はソファーの上に横になっていた。
俺が来たというのにピクリとも動かない臨也。

「い、臨也ッ……!!!」

肩で息をしながら変わり果てた臨也の名前を呼んだ。
セルティと新羅が心配そうに俺の側に心配そうな顔でよってきた。
新羅は何か言いかけていたが、二人とも俺の気持ちを察して、邪魔をしないようにそっとしてくれた。

―――二人とも申し訳ねぇ。俺は今それどころじゃないんだ……

少し微笑んでいて、可愛いというより綺麗。
死んでいるはずなのに眠っているようで、今にも起きてくるんじゃないか、という期待が膨らんだ。
だが、臨也の頬に触れるとその期待は無残にも壊れた。
ひんやりと冷たくなった臨也は、本当に死んでいた。

新羅が横で、臨也は誰かに刺されて腹に致命傷を負って死んだんだ、と言った。
臨也を刺した犯人はね……と言いかけていたのを止めた。
犯人を殺す気にもなれない。

悲しみが込み上げてくる。
臨也の冷たくなった顔に、大きな粒が流れ落ちた。
どんどんと溢れ出る大粒の涙。
数年ぶりに涙を流して泣いていた。

何時間泣いたのかわからない。
ただひたすら、かえらぬ愛しい人のために泣いた。

なぁ、臨也……

なんで手前は俺に殺される前に死んだんだ?

夜空に響くのは、一生かえらない愛しい人のために泣く誰かの声だった。
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