短編集

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明確な目的も分からないまま、正臣に連れられて外へ飛び出した僕達。
夕方とあって様々な種族の人間が行き通っていた。
まだ学生の時間だから、呼び込みの人もいない広い道は並んで歩けた。
正臣が向かった先は黒人ロシア人が呼び込みをする寿司屋、露西亜寿司だった。

「正臣ー?これから何するの」
「んーまぁ、チーム宣伝する」
「もう宣伝ですか?」
「とにかく困ってる人見つけなきゃダメだろ?」
「でもなんで此処なの?」
「まぁ見てろって」


「よぉ、アジタ。商売はどう」
「私、サイモンね。ダメネ、今日の天気と同じ。サムイ、サムイ。」
「今日は暖かいよ」
「アジタ? アンディとかいうんじゃなかったっけ」

アンディというのは小説中の登場人物の一人。
街の何でも屋を営んでいる黒人インド人。

「アンディはアングロ‐サクソン名。インド人だし、本名はアジタ・ベーラッティプッタ。
 先祖に有名な哲学者がいるって威張ってたって話」

僕はさまぁ〜ず三村さんのように突っ込んだ。

「哲学者か。インドの哲学者って何だろう。そんなのいるの?」
「さぁ」

スシ安イヨ、食ベル。とお馴染みのフレームを言いながらチラシを渡す。
正臣はサイモンさんに手を振って笑った。

「今日は食べに来たんじゃないんだ。もっと安くしてくれたらいいよ。
 ところで俺達『イケブクロ@DEEP』って作ったんだ。困ってる人を助けるチームなんだ」
「オゥ、それならサイモン、助けて欲しいネー。客もっともっと入るヨ」
「俺達も客探してんだ」
「ココはロシア寿司のシマ、ヨ。営業するならミカジメ料取るネー、そしてスシ食べるヨ」
「俺達はボランティアだってー。今日は極道もんの言葉ばっかりだなー。大方門田さん達来てると思ったんだけどな」

サイモンさんは店の戸を開けて僕達を奥に促した。
正臣は先にのれんをくぐる。
2メートルを越すサイモンさんにお辞儀をして僕も店に入った。
園原さんも同様に入店した。

店の中を覗いてみた。お客さんはまちまちだった。
奥のお座敷に門田さん達が食事をしていた。
狩沢さんと遊馬崎さんが気づいて、こまねきをしてくれた。
僕達はずうずうしくもお邪魔することになった。
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