friend -フレンド-
□(白梅 雪子side)
1ページ/8ページ
「きゃっ」
……馬鹿だな私。
また転んじゃった…
よく見ると周りには先程スーパーで買った物が散乱していた。
私は一つ溜め息を吐き、それを拾い始めた。
見慣れない町での一人暮らし。
それがどれだけ孤独で大変か、今まで知らなかった。
高校も変わり、学費はバイト代で稼ぎ、家事はもちろん、勉強をやる時間も必要。
だからといって、頼る人も居ない。
独りが、寂しい。
「大丈夫ですか?」
「ぇっ…」
顔を上げると、黒髪の男の人が私の事を心配そうに見ていた。
「す、すみません!今すぐ道開けますんで…っ」
私は拾うスピードを上げ、彼に迷惑がかからないようにした。
するとくすりと彼は笑い、私の向かいにしゃがみ込んだ。
「手伝いますよ」
「ぃ、良いですっ!ご迷惑でしょう!」
「大丈夫ですよ、これくらい」
目が合った瞬間、微かににこりと笑った。
どうしよう、なんかすごく照れる…
私は少しずれた眼鏡を掛け直した。
癖だ。
照れると、いつも眼鏡を弄ってしまう
頬も少し熱い。
彼に目を向けると、やわらかい笑顔をほんのり浮かべながら、落ちた林檎を拾っている。
―優しい。
先程までのブルーな気持ちが和らいでいく。
その優しさが、胸にジーンと、深く深く染みた。