殺つり人形

□攻劇
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キィーーン

鋭い音がして、イルの持っていた針が切れて落ちる。

「ッ〜くそっ!」

『天手』の毒蛇を出そうとするが、その前に糸が纏わり付き動けなくなる。

「強い・・・」

「すげえ・・・」

キリクとマクモは開いた口がふさがらない。

ノアは、出てきてから一歩も動かないで決着を付けてしまった。

イルの針もさっき投げたのが最後らしく針は投げられてこない。
その前に指一本も動かせない用にされていた。

『もう終わりですか?
以外とすぐ終わっちゃいましたね。』

12死徒レベルだから、こんなもんかな。

『どうしたんですか?
何か話してもいいですよ?
僕の事睨んでばかりじゃ分かりませんよ』

イルが唇を噛み締め睨んでくる。

『ああ!そうでした。
「殺取り」をしたから僕が操作するまで何もできないんでしたね。』

少し考えを巡らしてから、言う。

『どうします?
このまま大人しく帰ってもらえるなら自由にしますけど。
そうじゃなかったら・・・・』

目を細めて向こうのシュガーを見る。

『そこの、彼女。
貴方達は恋人同士なんですよね?
さっき話を聞いてた限りだとそれも馬鹿が付くくらいのカップル。』

ニヤリ

コレ言ったら、どれくらい驚くかな?

『今、僕はそこの彼の体の支配権を持っています。なので、頭でどう考えったって体は彼の言う事を聞きません。』

ああ、楽しいな。

『では、実証してみましょう。』

ゆらり

俺の指の動きに連動してイルが歩きだす。

イルは真っすぐ、シュガーの方へ歩いて行く。

「イル?」

シュガーが不安そうな声を出す。
きっと彼女は驚きに顔を強張らせた恋人の顔が見えているのだろう。

『う〜ん
人形じゃ無いので動き方がぎこちないですねー。
まぁ、良いでしょう。動かせれば良いので。』

そう言った所で、気づいた。

『声が出せなかったら意思表明できませんね。しょうがない。』

イルに付いていた『天手』の糸を1本だけ切り離す。

『・・・これで、話せますよ。』

「イ、ル?」

「シュ、シュガー」

2人の声が震えている。
あれ?気づいちゃったのかな?

『さて、本題です。
このまま、大人しく帰ってもらえれば彼女の体は温かいままで帰れますよ?
どうします?早く答えないとほら、』

イルの手がシュガーの首に回される。
そして、少しづつ締まっていく。

『早くしないと、彼女の冷たい体を持って帰る事になりますよ?
皮肉ですね。『天選』の愛し合う2人が相手を手にかけるなんて。』

「う〜、イ、ル・・・・」

「止めろ、止めろ、止めろおおおおお!!シュガーーーーー!!!!」


『そんなこと言ってないで、早く答えなよ。
手遅れになるよ?
ほら、答えは?』


「退く!だから早く彼女を!」

『はい。いいお返事ありがとうございました。』

まぁ、最初から殺す気はなかったけどね。
だって、12死徒減ったら困るじゃん。
・・・やっぱやり過ぎたかな?
ジェノスに行ったら、正体言って謝ろう。

「な、んで・・・・」

『何か言いました?マクモサン?』

「何でこんな酷い事出来るんだよ!!」

『酷い事?違いますよ。
ただの、自己防衛です。襲われたから返りうちにして、もう2度とできないようにする。
それだけですよ。彼たちの場合はどちらかを人質にして脅せばもう向かってこない。
それを見抜いただけです。』

そう言いきると、壁についていた連結ピンを引き抜く。
引き抜いてから、イルの『天手』の糸を切り離し自由にする。

『それでは、さようなら。
また会うときは、僕にバカな事しないようにお気を付けて。』

最初と同じように優雅にお辞儀をして再びマクモ達に向き合う。

すると、マクモ達は身構える。

『大丈夫ですよ。
僕は、戦いは嫌いなので自己防衛しかしません。
・・・・・・キミ達が殺るなら、本気で自己防衛はしますよ?』

殺気を含ませて言う

『そうゆう事なので、大人しくしてください。
すみません。解毒薬持ってますか?
包帯と消毒液は持ってるんですけど、解毒薬は今、無くて。』

ごそごそとカバンの中から包帯を出し始めたら敵意が無いと分かったらしく力を抜いて座席に座りこんだ。

「解毒薬ならボク持ってるよ。」

「何!!?
早く言えよ!!
死にかかってんだろ!!?」

『ああ、そんなに動くと包帯が・・・』

マクモが動いたせいで巻いていた包帯が取れてしまった。

「あ、ごめん。」

『大丈夫ですよ。』

マクモを見上げると目の端に鳥が映る。

・・・・あれは、ウワラの?

包帯を巻き終えるとマクモはキリクにくってかかった。

「キリク、しっかりしろ!!
これは、アメだ!!分かるか?
オレが分かるか?」

勢いよくマクモがキリクの事を揺するからキリクの顔色がさっきより悪くなった。

「やめてくれ・・・
気持ち悪い・・・」

えっと、吐き気に効く薬は・・・←(違う)

「ボクは正気だよ。
それは解毒剤入りのアメ!!」

「何!?
そうだったのか!!」

『へーー
便利なものがあるんですね。』

「こんなもん
よく持ってたな?」

「当然だろ
家族が殺されてるんだ
ボクまで二の舞じゃたまんないからね」

『・・・あのその事で聞きたい事があるんですが。
あの2人って、何者なんですか?』

「「はぁ?」」

「キミ、そんな事も知らないで戦ってたの!?」

『聞くタイミングが無かったですし、てっきり、お金目当てだと・・・
僕もこの年で1人旅をしてるのでよく絡まれるんです。大抵は、さっきみたいに脅せば退いてくれます。』

「あのな、あいつらは・・・・」

そうして、知らないふりをして彼らの知っている情報を教えてもらった。

『天選』の組織”ジェノス”
「死体狩り」・・・大量殺人のこと
そして、その実行部隊。
狩った死体を使ったビジネス
これから、シェルトで起こる大量殺人の計画。
組織の事はあまり知られてないが、シェルトの計画には、妨害できるくらいには知っている・・・
どうしようかな。

『・・・・・ジェノス』

「知ってるのか!?」

『知ってますよ。』

「なッ!?」

『あー、あれがジェノスの人なんですか。』

「どうして知ってるの!!?」

『どうしてって・・・一応僕も『天選』ですから勧誘されたんです。』

「そうなんだ・・・」

勧誘されたけど、返事がNOだとは限らないんだよ。
そのことは、教えてあげないけど。
それに、キミ達は僕がジェノスと戦ったからジェノスだとは思ってないみたいだから、都合が良いしね。

『・・・・・これから、お二人はどうするんですか?』

キリクがマクモに切り出した。

「ボクらこのまま、シェルトに行くのはよそう」

「!!?」
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