◆NOVEL◆

□【最期まで、】
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「…テメェのことなんざ好きになる奴でも居ると思ってんのか?」




ソレは片想いだった。
気付かないふりして過ごして来たけど、やっぱり俺の片想いだったんだな、三蔵。



いつもの喧嘩。
売り言葉に買い言葉。
お前はどう思ってその言葉を吐き出したのかは知らないけどさ。

時計の秒針が刻む音だけがやけに響くこの一室で、しまった、と一瞬視線を逸らしたのはなんで?
本音だったってこと?

…いいけどさ。
そんな言葉は慣れてるからいいんだ。


俺はアンタを求めた。
アンタも俺を求めた。
好きだよ、愛してるよって言えば、俺もだって優しく笑って口付けてくれたアンタの顔が頭から離れない。
その微笑みも、優しく髪を撫でてくれる綺麗な指も、静かに胸に落とされる声も、全部俺のものだと思っていたのはただの思い込みで、アンタにとっては誰にでも向けるものだったんだな。

知ってたよ。
アンタは悟空とも八戒とも寝ている。
知ってたんだ。
知ってたけど、俺にはアンタが必要で。
…知らないふりしてた。





「…そう、だよな」

わかってた。
俺なんか愛される資格もない。
こんな見た目だけ派手な髪と目を好き好んで近寄る奴は居ない。
…それでも。
嘘でもアンタが好きだと言うなら幸せを感じることが出来た。
嬉しかったんだよ、俺。

こんな俺でもアンタに抱かれている最中は愛されているんだって思えた。


「っ…さんちゃん言い過ぎー」


いつもの調子で返せばアンタは無理矢理取り繕うような顔してさ。


「…なァ、いいから…シよーぜ?」


ほら、愛してくれよ。
アンタが囁いてくれる言葉が嘘だったとしても構わないからさ。




―――愛して









「ん…っ、ぁっ、もっと…ッ」
「ッこの淫乱が…っ」
「…は、ぁあっ!さんぞ…っ気持ちぃっ」
「お前はココ、だろ…?」


最中に何気なく囁かれた「お前は」に引っ掛かった。
他の誰かを意識させる呪い。

何もわからなくなるまで犯してくれよ。


正常位で抱かれて、足首を高く上げさせられた格好で上壁を抉られる。
時折脚を抱え直してくれる三蔵の優しさにときめく。


「はぁ…はぁっ、悟浄…!」
「さ、ぞ…っ、も、ダメ…っ!」


絶頂を知らせれば俺の唇を迎えに来てくれる厚くて柔らかい三蔵の唇。
奥を小刻みに穿ちながら同時に乳首を捻りあげる指先。
熱に浮かされた声で名前を呼ばれると腰が痺れる。


「んっ、ん…イく…っ!」


腰を引き寄せられ、より深く繋がれば肩をガッチリ固定され激しく攻められる。


「後ろだけでイけんのか、あ?このドMエロ河童…ッ!」

俺を罵る言葉攻め。







好きだぜ、その顔。
いつでも綺麗なクセに、今は俺の為だけに息荒げながら腰振ってさ。
名前まで呼んで、キスもしてくれんの。
オマケに俺んナカで感じて、ナカに出してくれるんだぜ?
自分だけがアイサレテルって思い込んじまうって。







「あ、あっ、ァアアっ!三蔵ぉ…っ!」

「…っ!」









互いに熱を飛ばしてぐったりとしている俺の上に覆い被さり肩を上下している三蔵の背中は薄っすらと汗をかいている。

いつもこの瞬間に躊躇するのだ。

この背中を抱きしめたい。
でも、三蔵はそんな甘い関係を築きたい訳じゃない。

粗方の呼吸を整えればこの繋がりは解かれてしまう。




「…ごめんな、ちょっとだけ」


もう後戻りできない。
そっと背中に腕を回して華奢な体を抱き寄せた。
こんなふうに心まで繋がりたいと願って、事実こうして抱きしめてしまった。

最初こそ強張ったように力の入っていた三蔵の体が徐々に力を抜いて全体重を預けて来る。

そのまま優しく髪を梳いてやり、背中を一定のリズムでトントンと叩いているとやがて聞こえてきた規則的な静かな呼吸。



繋がったまま。



きっと明日の朝は叱られるだろう。
額に青筋なんか立てて発砲されるのだろう。
…それでも、今のこの状況から抜け出したくない。

少しだけでいいから許してよ、三蔵。



大好きなアメジストが隠された瞼に微かにキスして悟浄も眠りについた。
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