七転抜刀

□第一話
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俺は笑顔のまま固まる。つか、即答してくれるのはありがたいけどさ…、



何で!?ここが日本ってことくらい分かってないとその人間はただの馬鹿だよ。



俺はできるだけ相手を傷付けないように突っ込んだ。



「いや、それは分かってますよ」

「それはそうだよな。」



アハハー、と軽く笑う天使。マジでかわいいな。

が、すぐに表情を変え、人の良さそうな笑顔で友達にでも接するように俺に尋ねてきた。



「お前、名前なんて言うんだ?あ、俺、大江 蓮ね」



一人称が『俺』の女の人初めて見たな…。話し方も男っぽいし。


まあ、そんなとこに突っかかっても何なので、質問に答える。



「村上 時雨です」



極自然に、俺は名乗る。が、その後に帰ってきたのは目の前の大江さんの「そっかー」などの返事ではなく、



沈黙。



何故か大江さんは笑顔のまま固まっており、そして、沈黙の後に、




「……は?」




短く声をあげて、ポカンとした顔をした。



……いや、俺が『は?』だよ。



何かおかしかった?


何だか外国人に接しているような気分になった俺は戸惑いながら尋ね返す。



「え、どうしたんですか?」


「あー、いや、何でも無い。そっか。時雨ね。分かった」



うん!と頷きながら笑う大江さん。


え、いや、そんな肝心なとこあやふやにされると不安になるじゃん…。


大江さんは続ける。




「じゃあ時雨。ここは結構危険なとこだし、早く出たほうがいいぜ」



けらけら、と笑うと、大江さんは親指を立てる。


大江さんの言う『危険』というのは、床とか壁が脆いという意味だよな。



出たいのは山々なんだけど、ここが何処なのか分かんな
いしなー。



まあ、外に出れば分かるかな。



大江さんの忠告に俺は頷く。



「というか、まず何で俺がここにいるのかがハテナなんですけどね」



ぽそり、と俺は呟く。


が、そんな独り言のような呟きを大江さんは聞き取ってたらしい。


またも可愛らしく首を傾げた。



「ん?どういうことだ?」



おお、地獄耳。

まあ、事情を説明して損はしないか。


俺は、大江さんに事情説明を始めた。




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