駄文・二次創作

□疑惑
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 最近、柳生がおかしい。

部活が終わって、部室で着替えている時のことだ。
「柳生、今日帰り一緒に……」
仁王の声は、忌々しい赤毛の声によってかき消された。
「柳生ー、たこ焼き食いに行こーぜい! すっげえ美味そーな店見つけたんだ!」
柳生は仁王とブン太の顔を見比べ、申し訳なさそうに、
「……すみません仁王くん、また今度でいいですか?」
と言った。
 仁王はこのまま柳生の手を掴んで帰りたい衝動を押さえ込み、しかし不機嫌な表情を隠しもせず、言う。
「……何でじゃ」
困った顔のまま、柳生は口を開きかけるが、柳生が言葉を発する前に、
「柳生は、お前よりオレと一緒にたこ焼き食うほうがいいってよ〜」
と、ブン太が仁王に挑発的な言葉を投げかけた。
「丸井くん!……あの、仁王くん、そういうわけではありませんから……」
柳生はブン太に咎めるような視線を投げかけ、仁王に弁解する。
「じゃあ、なして、」
仁王の言葉は、着替えを終えたブン太によって再び遮られた。
「行こーぜ、柳生!!」
「は、はい。あの、仁王くん、本当にすみません!」
丸井と同じく着替え終えていた柳生は、丸井に引きずられるようにしながら、仁王にペコリと一礼して、他の部員にも挨拶をしながら部室を出ていった。
後に残された仁王は、部員たちの哀れみ半分、面白半分の視線を一身に受けながら、閉じられた扉を見つめていた。
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