駄文・二次創作
□BAR 千里眼
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ブン太たちと別れた後、幸村は真田の運転する車で別のバーに向かった。
目立たない黒の看板に、白抜きで『BAR 千里眼』とある。
和紙から差し込む穏やかな光に照らされた、カウンターのみの小さな店。酒の味を邪魔しない程度に、香のようなにおいがたちこめている。
現在、幸村たち以外の客はおらず、一人でこの店を切り盛りしているマスターがグラスを拭き、閉店の準備をしている。
客の来店を告げる鐘の音を聞き、マスターは幸村たちをちらりと見て、視線をまたグラスへと戻す。
「や、柳。こんばんは」
「ご注文は?」
マスターの無愛想な態度に憤る事もなく、幸村はにこやかに注文した。
「いつものを」
「ほう。…『情報』は、役に立ったようだな」
マスター―――柳蓮司は、慣れた手つきでグラスにブランデーを注いだ。