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□嘘つき。
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「まったく、風邪をこじらせたぐらいで入院とは
愚かにもほどがあるな」

ノックも無しに入ってきて、第一声がこれなんてちょっと酷いんじゃない?


2週間前、私は倒れた。
入院する事になり。
入院中に必要なものがあるので、幼なじみの引きこm…
自称天才科学者様(自称じゃなく本当に天才なんだけど、それを認めるなんて、悔しいじゃないか!!)を呼んでみた。

そして、その天才はこの2週間よくお見舞いに来てくれた。

…文句つきで。

まぁ、それも慣れてきて。
今では文句つきであっても、こうやって見舞いに来てくれるのが嬉しくて
笑って流せるようになってきた。

「あはは
ヴェルデはそう言いながらも、こうやってお見舞いに来てくれるから優しいね」

「ふん、私の行動をどうとるかは君のかってだか
退院したらこのカリは返してもらうぞ」

「えぇー…
カリなのこれ!?」


相変わらずけちなヤツめ。こっそり心の中で毒づく。


「当たり前だ
只でさえ君が居ないせいで研究が進まないというのに」

…それって。

ヴェルデの台詞に私は一つ気付いた。

「…ふぅーん、進まないんだ研究」

「……何が言いたい?」

「いや
何でもないよ」

「そうか…
なら、この林檎は無しだな」


そう言ったヴェルデの手には私の大好物の林檎。


「林檎!!!?」

「君がこの前、さんざん林檎が食べたいと言っていたから買ってきたんだがな?」


そういいながら、ヴェルデは林檎を頭の上に持ち上げる。
ベッドに座っている私はどんなに手を伸ばしても届かない。

くそぅ、身長が高いからって調子にのりやがって。



「ひ、卑怯だ!!」

「君が大人しく話したら林檎はやるが?」

「……」

「……」


林檎の誘惑に私は…、



負けた。


「……私が…」

「私が?」

「…さっきの私が居ないと研究が進まないっていうのって、私が居ないとヴェルデが研究に手がつかないってこと…だよね?」


少し俯きながら言った。
きっと今の私の顔は赤くなってるから。


でも、いくら待ってもヴェルデからの返事が来ない。

「……」

「おーい?
えっ、何?この沈黙」

「…そう思うならさっさと退院するんだな」

「へっ…?」

「私は研究に戻る
次に来る時には、退院できるようになっておけ」

「あっ、ちょっ、待って!!」


椅子から立ち上がってくるりと背を向け、足早にに病室を出ていこうとするヴェルデを私は咄嗟に引き止めた。


「…なんだ?」

「次って、いつになるの?」

「さぁな、これから少し大きな仕事が入っているが…
そんなに長くはないだろう」

「…そっか」

「どうした」

「ううん、何でもないよ」

「そうか、なら私は行く」

「ありがとう、ヴェルデ」

「あぁ」

微笑んで、小さく手を振り別れを告げた。








しばらくして、窓から病院を出て行くヴェルデが見えた。

その後ろ姿をみて、不意に涙が溢れた。


「…次、か
ごめんねヴェルデ。私、嘘つきだ…」



嘘つき。
(数日後、その病室に彼女はいなかった)
(貴方は私の嘘を許してくれますか)






去年の6月から書き始めたこの話、しばらく放置されやっと完成です!!

110401 soa

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