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□いつか死ぬときがきたら。
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『もし、私が死んだら貴方はどうしますか?』

不意にそんな言葉が私の口から出てきた。
いきなりの事で、発した本人の私も驚いたが、目の前に座っているメフィストは私以上に驚いたらしい。
紅茶の入ったティーカップを口元に近づけたまま眼をまるくしている。
それもそのはず、私は普段こんなことを言ったりはしない。
こんなことを言うのは普段ならメフィストの方だ。

「いきなりですね、どうしたんですか?貴方らしくも無い」
『そうですね』

聞き返されても困る。
なんとなく疑問に思ったことが口から出てきただけで、深い意味なんて無いのだから。

「……」
『……』

しばらく沈黙が続く。
自分が発した言葉で起こった沈黙はとてつもなく痛い。

「殺しますね」
『…は?』

沈黙の中、メフィストが発した言葉はとてもぶっそうなものだった。

「殺します」

メフィストは重ねて言った。

「もし、貴方が明日にでも死ぬというなら私は今直ぐにでも貴方を殺します」
『…明日になんて、私は死にませんよ』
「そうですか、それは良かった」

そう言って、メフィストは眼を細めて笑った。

喉が乾く、先ほどとはまた違った居心地の悪さが私を襲う。
目の前に置いてあったティーカップを手に取り、紅茶を口に含んだ。

「だから、死ぬ前になったら私を呼んでくださいね」

ごくり。
飲み込んだ紅茶は冷めてしまっていた。


いつか死ぬときがきたら。
(貴方は私の手で)


110402 soa

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