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□変わらないもの。
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咲き誇り、そして散る。の続編的な?
読まなくても、一応大丈夫です。






桜が咲いた。
私は今年も桜を見上げる。
頬を撫でる風は、温かくて優しい。

一瞬、何もかも変わっていない様に感じる。

でも、昔とは違う。
桜の木は学園のものではなくて、私の家に生えている桜の木。
私は祓魔師ではなく、ただの一般人。
悪魔は見える、でも祓おうとは思わない。

彼の秘書も辞めてしまった。
もう彼に、仕事をしろとは言わないし、書類が溜まっていますよなんて言わない。
言えないのだ。
その役目は今や私のものでは無いから。

理由?
そんなのは簡単。
時が経ったのだ。
私にとっては長い長い時間が。

今はただゆっくりと流れる時間を感じて過ごしている。

だけど、寂しくはない。
何故なら、私は一人ではないから…。



「何を考えているのですか?」
『…昔のことですよ、メフィストさん。主に貴方の事です』
「そうですか、それは良かった。私と一緒にいるのに他のことを考えては欲しくないですからね」

そう言って、昔と同じように彼は笑った。
それにつられて私も笑う。



一人ではない。
あの日、望んだものが今も横にある。

昔より自分と過ごす時間は減ってしまった。
会えない日だってある。

でも、彼は私のことを今でも気にかけてくれる。
こうして、毎日ではなくとも会いに来てくれる。

あの日と変わらないものがここにある。


今、私は幸せだ。

だけど、人の欲望とは尽きないもので、こんな私にもあと一つ願いがある。


ねぇ、神様。
「なんで私を悪魔に創ってくれなかったの」とか「どうして彼が人間ではないの」とか言わないから。

お願いです。
私の命が切れるまで、後もう少し。

あともう少しの間だけでいいので、彼の傍に居ることを許してください。

そうしたら、きっと最期まで私は笑っていられるから。

隣に座る彼の手を、ゆっくりと握ってみたら。
優しく彼も握り返してくれた。

それが嬉しくて私はまた笑う。
今度は彼がそれにつられて微笑んだ。



変わらないもの。
(私の傍にそれはあった)




思った、私の小説ってあんまりメフィストがしゃべらない…。
110504 soa

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