one's first love.
□NINE.
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しばらくは、観光名所とは言えないが、有名な所を一回りした。
***は楽しそうに微笑んだ。
『真田くん、ありがとう。とっても楽しい…。』
不意に***は言葉を漏らす。
「奇遇だな、###。俺も一時はどうなるかと思ってはいたが、楽しと思う。」
そっけない返事ながらも、彼も心の中の本音を口にできた。
『良かった…。退屈だったり面倒だったりしたらどうしようかと思ったよ。』
「そんなことは断じてない!!」
本当に?
だったら、嬉しいな。
私との時間を嬉しいと思ってくれて…。
真田くんがそう言うなら私、その言葉、受け止めていいよね?
ありがとう。
二人は、それからしばらく石段に座っていた。
ここはどこかって?
神社です。
「だぁーーーー!!全っ然ダメじゃん!!」
ブン太はこの世の終わりと言いたげに頭を抱えた。
「うむ。弦一郎らしいと言えば、弦一郎らしいが…。」
蓮二もこれには小さくため息を漏らさずにはいられなかった。
そして同時に、これほどまで彼がデートという単語に無知だったかを知らしめられる。
「終わったな…。」
ジャッカルが両手を合わせて南無南無と拝んだ。
「ふふっ。面白いな。」
相変わらず幸村は他人事のように楽しんでいた。
いや、実際、他人事だが…。
そう、真田が案内したのは[歴史博物館]・[図書館]・[神社・お寺]だった。
「年寄りじゃな…。」
「って言うかデートじゃなくて、これ、遠足的な奴ッスか?」
頭痛てーーー!!腹痛てー―――!!
赤也は爆笑していた。
他人事のように。
いや、他人事ですが…。
「堅すぎますね…。」
と言いつつも、笑っている二人を見ると、***はそう気にしていないらしく、なんとか上手くいっている様子だった。
彼女は笑っていた。
とても、嬉しそうに…。
楽しそうに…。
真田に向かって、笑っていた。
その様子を望遠鏡越しに見て、少しだけ、赤也の表情が曇ったのだった。
彼もまた、人知れず鈍感なのであった。
その横で、小さく、眉を寄せる人物。
(うちの部員は、何でこうも…。)
後輩の小さな表情の変化に気がついたのは、幸村だった。
(赤也…。これでいいのかい?)
幸村は微妙に笑って見えるほど、ほんのちょっとだけ、口角を上げた。
しかし、笑っているのではなく、大切なものを見守るように…。
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