one's first love.
□FOUR.
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「俺達の名前覚えてる!?」
目を輝かせ黒髪と赤髪の二人が***の元へ詰め寄ってくる。
『えと、丸井君と切原君だよね?』
それを聞いて益々盛り上がる二人が前のめりになりすぎて***は一歩下がって対応していた。
「んじゃさ。俺の事は赤也って呼んで下さい!!年下なんで!!」
『う…ん』
「赤也てめぇ…***!!俺もブン太でいいぜぃ。」
『はぁ…』
「ブン太、さりげなく***を名前呼びし
ておるのぅ…俺も別に雅治で構わん」
『・・・・・・。』
「自分こそ名前呼びしてるだろうが!!」
何とも醜い問題児達の争いに見兼ねた幸村が
優しい(黒い)笑顔で三人を外へと放り投げた。
***不安になり同じクラスの柳生を見上げた。
『や…』
「どうしました?」
対応は素早かった。
(たしか噂では紳士って呼ばれてるんだっけ)
『なんでも。柳生君…よろしくね』
「いえ、こちらこそ。」
***はジャッカルや柳とも軽い挨拶を交わした。
「それじゃ…頼むよ ***。」
幸村は***の肩に手を置いた。
「「「自分もちゃっかり名前呼びしてるじゃん…」」」
窓から覗いていた三人は呟いた。
「遅れてすまなかった。委員会が長引いてな。」
ドアを開けて入ってきたのはレギュラー最後の一人、真田だった。
『あ。』
「む・・・。」
「あ、真田。いい所に来たね。」
「幸村、どう言うことだ。」
「ん?聞いてない?マネージャーさん。」
「こ、こいつがか?」
明らかに驚いていてなおかつ***をちらりと見るなり視線をそらした。
「何かいけない理由でも?」
「ん…特にないが…。」
「じゃ、確定!!」
真田も言い返すことができず幸村に流されてしまった。
しかし、それでも悪くないと、いや、むしろ思いもよらぬ感情が込み上げてくるのを覚えた。
(嬉しい…?)
おかしな感情だと思ったが、あえて触れずにいたかった。本能的に…
『真田くん。よろしくね』
「うむ。よろしく頼む」
***はニコリと笑ってみた。
そうすれば彼も笑って返してくれると思っていたが、相変わらずの顔でそっぽを向いた。
転校して来てまだ彼の笑った顔を見たことがなかったからだ。
失敗だった。
「真田副部長〜照れてます〜?」
いつの間にか入ってきた赤也が真田を見上げた。
「何だと!!」
「じょ、冗談ッスよ。冗談」
あはは…
そう言って柳の背中に隠れた。
一瞬図星だと感じた。
ことは、心の底にしまい込んだ。
恋愛感情に疎い彼だから出来ることだった。
はっきり言うと鈍感だった。
気付くのはもっと後になりそうだ。
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