one's first love.
□EIGHT.
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「###さん。」
『ん?柳生くん?』
それは休み時間の事だった。
***と柳生は同じクラスというのもあり、よく話す。
***も柳生も結構楽しかったりする。
もちろん、真田ともよく話す。
「さっき、幸村君から連絡がありました。放課後はミーティングをするそうです」
『うん。わかった。ありがとう』
「いえ。それと、申し訳ありませんが、真田君にも伝えてくれますか?」
『うん。』
そう言って席に戻った。
真田くんは柳くんと話しているらしく、多分廊下だろう。
真田弦一郎。
強くて、厳しくて、表情が怖い。
あまり笑わない。笑っても、これまた怖い。
でも、優しくていい人。
それに、なんだか
他の人と、違う感じがしてならない。
動悸がする。胸が痛くなる。
歩く死神だったり…って思ったこともあったが、違うらしい。
***は理由が分からずただ唸っていた。
考えても分からず、頭を振って大きく背伸びをした。
(後、一時間でお昼だよ)
それに、平凡でいいことだった。
もう少しでテニスの大会があるから、多分幸村くんはその話をするのだろう。
『はぁ…眠たい』
お昼休み。
待ってたとばかりに動き、騒ぎだすクラス。
そして廊下を駆ける音。
(騒がしい人だな…)
なんて、何気なく見た廊下を全速力で走っているのは赤也だった。
『赤也くん!!』
「ん?あ、***先輩!!購買行くんですけど、なんか要りますか?」
『いや、私はいいよ』
「そうッスか?俺、速いんで特急で買ってきますけど?」
『あはは、赤也くん…そうもいかないみたいだよ』
ぬらりと後ろに現れた威圧に後ろを振り返らずとも、赤也の背筋が伸びた。
「赤也!!貴様は何度言ったらわかる!!廊下は走るなとあれほど言っただろう!!」
「ひぃ!!副部長!!」
「まったく、たるんどる!!」
「す、すみません!!」
捕まった赤也はくどくどと叱られていた。
その壁の向こうでブン太が汗を拭いていた。
「ふぃー。あぶねーあぶねー。俺って天才的ぃ?」
「どうでもいいから早く行っちまおうぜ」
売り切れるのが早いという購買は戦争だった。
一秒でも遅れれば、もう空っぽ。
そのため全員が必死だった。
もちろん、テニス部の問題児たちも…
ブン太とジャッカルが購買に走っているところに真田が見えたんで止まってみれば、案の定、赤也が先に捕まった。
「へへっ」
「早く行くぞ!!」
「分かってるって」
そろりと違う道を通ろうと後ろを向いた。
「ブン太、ジャッカル…逃げるのはよくないね?」
立っていたのはあの、部長…
「「ぎゃっ!!幸村!!」」
「フフッ」
ここでも二人、捕獲された。
今だ、叱られている赤也と真田に半分はあきれ顔、半分は楽しそうな顔で***は近づいた。
『真田くん、そのくらいで…』
「だから貴様は…ん?###?」
『赤也くんも反省してるし、だから、その…』
「***先輩!!俺、早く行かないと昼飯、食い損ねるんッスよ〜」
赤也は***の前でお願いします(助けて下さい)と言いながら手を合わせた。
苦笑いで答えた。
『真田くん…』
「わ、分かった…そこまで言うなら…」
腕組をといて「次はないぞ」と言われた瞬間に、赤也は駆け足で購買へ向かった。
「ありがとうございます!!」
タカタカと廊下を急ぐ。
「こら!!走るな!!」
「うへっ、そうだった」
懲りない後輩だった。
(けっこう大変ね。真田くん)
その可愛い後輩の背中を見送った後、***は思い出したかのように、真田を見上げた。
『真田くん、今日の放課後はミーティングだって。』
「む。そうか」
***の話を聞こうと顔を向けた。
『くすっ』
「?なぜ笑う?」
顔をみて何の脈絡もなく笑う隣の***にハテナマークが浮かんだ。
『だって、赤也くんも気がつかなかったんだろうけど、真田くん、お弁当にハンバーグかなにか入ってた?』
「あぁ、入っていた。」
『ふふっ…真田くんちょっとしゃがんで?』
「?」
言われるままに***の目の高さまでしゃがんだ。
(真田くんって結構大きいよね)
自分で言ったものの同じ目線で真っ直ぐ顔を見られて少し照れくさかった。
というより、
(なんかドキドキする。)
なんで真田君だけこんなに緊張するんだろう…。
前にもあった…
この間の帰り道もそうだったな。
他にも、何度か思い当たる節がある。
訳も分からずドキドキした。
もっと一緒にいたいとさえ思った。
こんな気持ち、初めて…
そんな事を思いながら、手を伸ばす。
ゆっくりと***の手が、顔に伸びてくる。
「むっ!!!」
少し、いや、ものすごく驚いてたじろいだが、「じっとして」と言われてまた元にしゃがんだ。
***の指が頬をなぞり、唇をなでる。
爆発寸前2秒前だった。
『ケチャップついてた』
と言い照れながら指先を離した。
『真田くん?もういいよ?』
今だ固まったままの真田に声をかけた。
「ああああああああ、ああ。」
『あはっ。真田くん噛みすぎ』
「す、すまぬな。ありがとう?###、お前顔が赤いが、大丈夫か?」
『ふぇ?』
へんてこりんな声を出して両手で頬を覆った。
(なんでなんでなんで?)
ドキドキしているのがバレたのかと一瞬焦ったが、その様子もなかったので、慌てて
『ななな、なんでもないよ!!元気!!』
ごまかすように言った。
「貴様も噛んでいるではないか」
『あ、あははそうだね』
あぁ…またドキドキする。
[そう言って微笑む彼女に心臓の鼓動が休まることはなかった。
止まらなかった。
(なんだというのだっ!!!)
分からない、分からない、わからぬ!!
心でそう叫び続けた。]
[彼の顔から目が離せなかった。
釘づけだった。
こんな自分、おかしいのかな?
(もう…なんでぇ?)
やっと気付き始めた恋に目が回りそうだった。]
あっちで幸村の制裁を受けるお二人と、こっちで鈍感な皇帝と天然な彼女が、、、、
ごほんっ!!
柳は一口、お茶をすすった。
「今日も平和だな」