one's first love.
□NINE.
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ある日の日曜日、真田家では道場で朝の早くから真田弦一郎が、竹刀を振っていた。
7時。
もうかれこれ3時間も道場にこもっていた。
「修行が足りん!!」
そう言ってひたすらに汗を流す。
考えても、考えても出てくる答えは無い。
いや、考える事をしてはならんのだ。
巡らすと、また自分を失ってしまう。
少し前から蓮二が俺を諭すような態度をとる。
思い当たる節が無いこともない。
いや、正直に言えばあるのだ。
あるのだが、考えたくない。
その事を考えてはいけない気持ちになる。
この時期、考えてはいけないのだ。
誰もいない、朝の道場で一人、自分と戦う…。
「…はぁ、はぁ…。」
息も切れ出した頃、竹刀を手中に収める。
「ふぅ。」
一呼吸おいて、
そして狭い天井を仰いだ。
「頭からも離れん、あいつの存在とはなんだ?」
呟く声に答える者はいない。
〜♪
〜♪
〜♪
「?」
いつもは連絡と緊急の時にしか使われない携帯電話が鳴る。
「誰だ?」
近づいて携帯の着信を見る。
「精市か?」
はじめに言い忘れていたが、今日は日曜日。
珍しく部活も休み。
それでも怠けられないと、いつも通りの朝に起きた真田。
そして目の前で鳴る携帯の通話ボタンに手をかける。
「やあ、弦一郎?」
いつもながらの軽快な声。
「どうした、」
「これから何か用事とかあるかい?」
「いや、特に何もないが…」
「そう、じゃあ俺の買い物に付き合ってくれないか?」
「うむ。構わん。」
そう言って約束をして電話を切り、真田は道場を出て行った。
(10時に喫茶店前…か…。)
忘れないように頭の中で繰り返し、一度着替えるべく、部屋へと向かった。
「さぁ、作戦実行だよ?」
幸村の声と同時にみんなが頷いた。
が、
「やっぱりちょっとノれませんッスけどね…」
小さく呟く声が聞こえた。
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