one's first love.

□ONE.
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―3年A組―




新学期

新学年。

騒がしいクラス。

雑音。

ため息と共に耳をふさぎたくなる。

居心地が悪い。

「弦一郎。」

声のする方を見ると見慣れた顔。

少し安堵した。

「蓮ニ。柳生」

「かなり参ってるようだな」

眉間のシワが深くなるのを見て察したらしい。

「全くだ。クラス替えごとき、騒ぐ程の物でもあるまい」

一呼吸して尋ねる。

「蓮ニは俺と同じか?」

「残念ながら。」

「そうか。」

「私が同じですね。」

指先で眼鏡を触りながら柳生が言った。

「うむ。よろしく頼む。」

「いえ。こちらこそ」

「そうだ弦一郎。このクラスに転校生が来るそうだ。知っているか?」

と言った。

初耳の言葉に質問で返した。

「この時期にか?」

「らしい。が…やはり知らんか。」

「うむ。俺は興味は無い。」

「そうか…。」

そう言った後。

柳生は真剣な顔で語った。

「私達はもう三年です。」

その言葉は我々にとっては何より重く感じた。

「そうだな。」

「あぁ。」

三年という立場にいる以上。

引っ張って行かなければ。

全国へ

優勝へ

それは三年になって感じる。

それは自身だけでなく柳生も蓮二もそう思ったに違い無かった。

特に幸村はそうだろう。

そんな事を思う新学期。










ふと時計を見る。

「蓮二。予鈴が鳴るぞ」

「そうか。それじゃ俺は戻る。」

蓮二は片手のノートを守りながらそのまま騒がしい連中を掻き分けて教室を出て行った。

「私も席に着くとしましょう」

柳生も歩いて行き、静かに椅子に座った。








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