one's first love.
□TWO.
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内容が頭に入らない。
『はぁー』
怖かった。
緊張した。
転校と言うのは何度しても慣れないものだった。
そういえば自己紹介してる時。
凄い形相で睨んできてる人がいた。
ふと思い出す。顔。
第一印象…怖かった…。
中学生とは思えない大人びた人で、何と言うか近寄りがたい。
そんな事を思いつつ***は読みかけていた本を閉じた。
陽は欠けはじめている。
気が付くと教室はもう自分一人だった。
『そろそろ帰ろう』
鞄にプリントを詰め込んで教室を出た。
―校門―
オレンジ色の門から出て振り向く。
これから通う学校。
『頑張ろう。』
小さく呟いて、前を向いた。
『・・・あ。』
大きな鞄を肩から下げた集団の一人とぶつかって***の鞄の中身が散らばった。
「す、すまん。怪我は無いか?」
『い、いえ私こそ。前をちゃんと見て無かったので…?…あ。』
顔を上げて固まってしまった。
彼も同じよう固まった。
「・・・む。」
そう、さっきの仏頂面の彼であった。
一瞬にして心は悲鳴を上げた。
「ひ、拾うのを手伝おう。」
相変わらず、苦手な彼は仏頂面で言った。
『・・・ぁりがとぅ。(ボソッ』
それだけしか言えなかった。
散らばったプリントを集めながら真田は***をちらりと見た。
間近で見るとより深い瞳に一層心臓が速くなる。
顔が熱くなった。
(何だと言うのだ・・・)
***は目を伏せて必死に散らばったプリントをかき集めた。
早くこの場から立ち去りたかったのだ。
「あら…貴女は…」
柳生は集団の中から顔を出した。
『え?』
顔を上げてみるが、まだ全然分からない。
「柳生…知り合いかのぅ?」
「えぇ、私のクラスへの転校生です。###さんでよろしいですよね?」
『は…い。』
「ほぅ…」
柳はノートを取り出して何かを書き込んだ。
「へぇー。今日噂になってた奴か…俺 丸井ブン太。シクヨロ☆」
その赤髪でガムを噛んでいる人の後ろから
「丸井先輩ずるいッス。俺 切原赤也。よろしくッス。」
無邪気に笑う人も顔を出した。
***はここで失礼をしてはいけないと思い、二人に向き直った。
『えと、よろしく…ね?』
そう言い終わると、
「これで全部だ。」
束ねたプリントをずいっと前に差し出された。
彼だった。
『ひっ…』
帽子の下から見える鋭い目に***は飛び上がった。
『あ、あああありがとう。』
***は鞄に押し込むと柳生達の間をすり抜け特急で走り去った。
深い黒の瞳と肩までの同色の黒髪がさらさらと揺れて。
その甘い香りがしばらく真田の鼻を擽(くすぐ)った。