one's first love.
□NINE.
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「うーむ。」
真田は考えを巡らせた。
(どうしたものか…)
向かいに座る***をちらりと見る。
彼女もまた、物思いにふけるように考え込んでる。
(このまま別れるのは…)
そこまで考えて目を閉じる。
(いかん、行かん。彼女を傷つけてしまう恐れがある…。)
何より自分もここで別れるのはもったいなく、嫌だと、心のどこかで叫んでいる気がした。
口には出さないが…。
「真田くん、どうしようか?」
***も考えがまとらず、真田の意見も聞きたく声を発する。
全く、一体何がしたいのだ。
と、真田はここまでの苦労を思い出す。
約束場所に来たが、電話が鳴り、精市は急な用事が入って来れないと言う。
そして突然現れた彼女は柳と「ここ」で待ち合わせていて、柳も急な用事で来れなかったと言う。
そして、困り果てた二人に幸村から連絡が来る。
「弦一郎、蓮二も、た・ま・た・ま・彼女と待ち合わせてたみたいなんだ。だから、俺の代わりに彼女と遊んで帰ってね。」
【きちんと彼女をリードすること】念を押すようにそう言って一方的に電話を切る。
そして柳から###にかかってきた電話も同じような内容だった。
ひとつ違うとすれば、遊ぶ事。が遊んであげる事に、変っていた所だが…。
なぜか、引っ掛かる。
それでも、困るものは困り、喫茶店へと入り相談することとなった。
という流れだった。
それにしても、彼女がいつもと違うように見えるのは制服ではなく私服だからか?
黒い目と黒い髪に対称的に綺麗に着こなされた服がやけに大人っぽい印象を与える。
(なにを、見ておるのだ…!!)
自分の頬に一発平手をくらわす。
『ど、どうしたの?』
驚いた彼女は身を乗り出す。
(た、頼むから、これ以上は…。)
「だ、いじょうぶだ…。」
赤くなった顔を手で押さえて我に戻ろうと必死に別の事に考えを巡らせた。
それからしばらくして、落ち着いた頃に話を切り出す。
「精市と蓮二は何か臭うものがあるが、ここは従うのが有効だろう。」
『うん。』
「それに…」
『?』
とっさに浮かんだ案を出してみる。
「お前も俺も、このまま帰っても退屈だろう…。」
『う、うん。』
「お前は街は転校して来てから街を見たか?」
『う、ううん…。あんまり…。』
「そ、そうか。ならば、今日は俺でよければ好きな所を案内するが…。」
照れくさそうに言う真田を見て、***の顔がパッと明るくなった。
『うん!!行きたい!!でも…いいの?真田くん?』
「無論だ。暇だと言った。それに、男に二言は無い。」
『うん。うん!!ありがとう、真田くん。』
「うむ。」
やっと二人との笑顔になった。
「お〜真田もやんじゃんか!!」
双眼鏡を片手にブン太が4つ後ろの席から二人の様子を眺めた。
「ふむ。うまく行ったようだ。次はどうする?精市?」
その横でもう一人、双眼鏡を片手に二人を見守る柳。
「フフッ。そうだな…成り行きで…。俺との約束を守らなかったら承知しないつもりだから…。」
コーヒーを飲みながら笑っている。
((ぜってー楽しんでるよな…。この人…。))
赤也とジャッカルがそう思う隣には仁王、柳生と並んで座っていた。
回りの客は少し珍しそうに見て行く人もいるが、大概は幸村を見ているだろうから気にしない。レギュラー。
「あの、ジャンボパフェのご注文のお客様ー。」
店員さんが大きなパフェをトレイに乗せて声尾をかけてくる。
「あぁー!!俺、おれ!!」
「つか、なにやってんッスか!!丸井先輩!!」
「しょうがねーだろー。パフェが俺を呼んだんだから…。」
「呼んだのはオメーだろ…。」
ジャッカルが呆れ顔で目の前のパフェをガッつくブン太を眺めた。
「おい、動くぞ!!」
声をひそめながらパフェを食べるからと、見張りをジャッカルに交代して間もなく、二人に動きが出た。
「そうか…。じゃあ、行こうか。」
「おう!!」
ブン太も少し乗り気で立ち上がった。
「お前…パフェは?」
「?終わったぞ?」
「・・・・・・。」
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