one's first love.
□TEN.
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『ああ、昨日はびっくりした。』
「んで?感想は?」
登校中、***とそのお友達は、そこにいない真田の話をしていた。
と言うのは、昨日の出来事であった。
『感想と言われても…。相変わらず優しくて、カッコいいなって…。』
「優しい?」
『あ、うん。真田くんって最初はもの凄く怖かったし、苦手だったけど。』
いつしか、彼にドキドキさえしていた。
「・・・・・・・。」
『?』
「それってさ…。」
俯いた後、あきれ顔でこちらを見た。
「いや、何でもない。」
自分で気付きなさい。そんな事を言われた。
『?』
疑問はでたが、あえてスルーした。
心が、何だが、痛くなるような気がして。
そんな痛みを、抱えたくなくて、いつの間にかそれが日課となっていた。
多分、いや、確実にそれが、嫌なのだ。
彼女も、真田くんも、似ても似つかない二人だが、一つの共通点を挙げるとすれば。
両者、共に、逃げていることだけだった。
その会話を数歩後ろから聞いていた柳生はそう思ったのだった。
(しかし、この行為は…)
紳士に反するのだろうか。
問うてみたが。
(反しますね。)
あっさりと答えは出てしまった。
***は大きく背伸びした。
『真田、くん、か。』
小さく、呟いた。
気付かないうちに、彼を追う、自分がいる。
そしてそれに気付かない。
痛みにも、気付かない。
『大丈夫なの?真田くん…』
朝練習後、幸村から突然の話を聞いていた。
幸村はラケットをしまいながら「真田はちょっと熱が出て早退した」と、言いだしたのだ。
『でも、いきなりどうして…』
「ああ、それはね」
ちょっと刺激が強すぎたのかもね。
そう、幸村くんが言った。
『?』
不思議そうに傾げたが、あえて何も言わずにタオルをたたむ。
(その鈍感さ、どうにか、ね…)
鈍さが、彼を、彼女自身も追い詰める。
***の姿を少し悲しげに幸村は見つめた。
「しっかし、春から冬に逆戻りしそうッスね」
「正直に珍しいっていっちまえよ、赤也」
ジャッカルが促している。
その口元が笑っていた。
「言ったら俺らがちゃんと真田に伝えとくからよ☆」
「ついでに愚痴も言っておけ。俺がちゃんと伝えてやるぜよ?」
「俺、今、あぶねーッスか?***先輩?」
『危機的…かな?』
むしろ崖っぷち?
なんて、そんな他愛もない会話。
でも、何か物足りない気がするのだった。
彼が、いない。
それだけで、今日一日がもう終わった気がして。
「***?」
柳に肩に手を置かれて気がつけば、上の空だった自分がいた。
「大丈夫ですか?」
『あ、うん。大丈夫だよ。柳生くん…』
大丈夫だよ。
全然、大丈夫。
また、心が空の気分。
こんな事、今まで一度だってなかった。
なんで、いないだけで…。
ただの風邪なのに。
心配で、こい、しい?
そう思った瞬間に大きく頭を振った。
(違う、違う…)
チャイムが大きく響くのが聞こえた。
幸村が手を叩くと、ちらほらと鞄を持って各々の教室へと向かうのだった。
最後に出て行こうとする***を呼びとめた幸村が。
「どう?後でお見舞いでも行くかい?」
そう言った。
簡単に、答えは出ていた。
『う、ん。配布物もついでに届けたいし…』
「じゃ、決まりだね」
会いたいの?
私は、彼に、会いたいの?
(変な、感情…。)
そう会話したのちの、放課後。
部活を終えたのち、レギュラー陣とマネージャーは皇帝の家へと向かったのだった。
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