REQUEST

□恋人宣言
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「名前!!おい!!」

駆け寄った赤也が、虚ろに目を開ける彼女の上半身を起こし上げ、声をかける。

周りがざわざわとした雰囲気となって、誰かが先生を呼びに行くと声を発した。

「頼む!!」

誰だか分からないその声に、赤也は精一杯叫んだ。

ゆっくりと、ゆっくりと彼女をその場に寝かせる。

「んで?誰だ?ボール当てた奴…」

赤也の圧倒的な声に、周りはシンと静まる。

握る手に、力が入るのを感じた。

「誰だ!!」

今度が、叫びが激怒の絶叫に近い声に変わる。

そして、振り向いた彼の目は、真っ赤に染めあがっていた。


「ヤバい…」

同じテニス部の同級生がそんな言葉を漏らした。

「誰だ!!出てこい!!潰してやる!!」

叫び、手がつけられない状況をつくりだす。

「ヤバい…真田先輩も、幸村先輩もいないのに…!!」

誰かが後ずさった。



赤也は、何も答えない周りに、一層苛立ちを覚え、


「そーかよ、全員、潰してやんよ…。」

悲鳴が聞こえた。


そして、赤也が誰これ構わず、跳び出そうとした時、名前の手が、赤也の袖を掴んだ。

「名前…?」

意識が遠のいていく彼女へともう一度振り向くと、意識を失いながらも、しっかりと袖が握られていた。

















「あ…。」

そんな弱い声を出した。

「・・・・・・・・あぁ、そっか…。」

そんな一人で納得した声を出した。

「ごめんな…」

そんな泣きそうな声を出した。

「名前…」


そして、そんな愛おしい彼女の名前を呼んだ。




ゆっくりと、彼は、落ち着きを取り戻すのだった。


たった、一握りの、力によって…。











その後、先生が駆け付け、名前を保健室へと連れて行くことになり。

もちろん、彼は、

「俺が、運びます…」

そう言うのであった。

まだ少しざわつく集団の中を、赤也は名前を抱き上げ、大事そうに、とても大事そうに運んだ。




『あ、かや…考えて…』

気絶する名前が寝ぼけたように、言う。

「こんな時まで俺の心配かよ…」

呆れたような、悲しいような、そんな顔で赤也は腕の中の彼女を見る。

でも、

「ありがとう、助かったぜ」

この言葉は、とても愛おしそうに、彼女へとかけるのだった。

聞こえていなくても、そうでなくても。






やっぱり、君だけが…




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