創造の果て
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第二章:雨垂れ石を穿つ 2話
「ライガット、勇弥。力を貸してくれないか?」
ホズルの反強制力を持った声色が、ライガットと勇弥の三半規管を揺らした。ライガットは驚いた顔をして、ホズルを見やった。そして戸惑いを隠せなかった。
「ホズル……? 何とかしてやりたいが、俺たちは小銃すら撃てない……。知ってるだろ……?」
知らないわけない。ホズルの表情はそう物語っていた。しかし、逆に『能無し』にしかできない何かがあると、ホズルは言っているように思える。
「来てくれ」
声色は変わらないのに、空気だけが二人に重くのし掛かる。思わず勇弥はシギュンを見た。シギュンの顔に、何かを反対するような感情が込められているのを見て、勇弥は思わずたじろいだ。
それでも、ライガットの掌の温もりが勇弥を平常心で居させた。
ホズルと護衛の兵士に連れられ、二人は歩き出した。
握りあった手は無意識の内に絡めあい、自然と来るであろう恐怖に身を構えていた。
▽ ▽ ▽
パレードのような人集りに、勇弥は驚かされた。「陛下」と呼ばれ「ホズル様」と慕われる当の本人は照れ臭そうに手を振っていた。
「ライガット、親父さんは元気か?」
ホズルの疑問の声に、ライガットは特に悲しそうな表情もせず「死んだよ」と言った。
「なんだと!? 埋葬式は!? なぜ呼ばなかった!?」
「式なんてやっねぇよ……! 誰が来るんだよ?」
ライガットはこれでもかと問いつめてくるホズルに呆れた声を出した。
そして窓の外を見ながら、独り言を言うように口を開いた。
「能無しを三人育てて、借金までして俺を士官学校に入れた男だぞ。魔力が芽生えると信じて……。……馬鹿な親父だ……」
無理をして自らの親父を馬鹿にしているようにしか勇弥には見えなかった。
ライガットは勇弥と握りあう手に静かに力を入れた。
「だが運命に抗おうとした……。……素晴らしい親父さんだと思うぞ!」
ホズルはライガット、そして勇弥にも言い聞かせるように声を荒げた。ライガットは黙ったままだ。
ホズルは少し俯き、寂しそうに呟いた。
「……俺は……抗えん……!」
こんなときどんな表情をして応えればいいのか、人生経験豊富の勇弥ですら答えを見いだせなかった。
重いような暗いような、負の空気が三人に鉛のようにのしかかった。