創造の果て


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第二章:雨垂れ石を穿つ 5話




「……んが、っれぇ……?」


 勇弥は机の上から顔を上げ、ゆっくり背筋を伸ばした。ふぁ、と欠伸を一つ吐き出し、服の裾で目を擦った。

 昨日、やはり夜中に目が覚めてしまい、アテネスとクリシュナとの戦力差を単純に計算した。――元軍人の血が、騒いだせいだろう。


「……ふぁ、やっぱり……眠たい、」


 単純な計算、クリシュナのゴゥレム保有台数200台弱、内100台強は各地の防衛。結果80台強しかビノンテンにいない。
 アテネスのゴゥレム保有台数は、国土面積からして700台強。各地に散ったとしても、クリシュナは包囲殲滅されるだろう。


「……朝からヘビーな話は止めよう、」


――それに、憶測にしかすぎない。


 昔からの悪い癖だ。勇弥は夜通し書いた紙を握り潰した。とりあえず、さっさと顔を洗って格納庫に急ぐとしよう。



▽ ▽ ▽



 勇弥は目を擦りながら長い廊下を歩いていた。格納庫への道は二度目のおかげか、スムーズに進むことができる。ただ、相変わらず眠いが。

 
―ウーッ……、ウーッ……、ウーッ……


「……?」


 突然、城の中が喧騒に満ち溢れた。警笛が鳴り響き、人々が慌ただしく走り出した。


――敵兵? 急がないとっ!


 勇弥は大急ぎで格納庫へと走り出した。途中、一回躓いて。



▽ ▽ ▽



『北方環状外門で交戦中! 敵戦力は不明!』

「っはあ、はあ、ライガ、ット!」


 城内に響く警笛と警告を聞きながら、勇弥は黒銀のゴゥレムのコックピットの近くで、操縦の説明をしているライガットに駆け寄った。黒銀のゴゥレムの隣に座るように屈んでいるファタリタも目に入り、勇弥は絶え絶えの息を整えた。


「ライガット、勇弥。何してるの?」

「……シギュン……!」


 シギュンは勇弥に微笑みかけ、そしてライガットを不思議そうに見た。ライガットは困ったようにシギュンを見て、肩を竦めた。

 
「叩き起こされて操縦の説明をさせられていたら……、これだ……! やっぱコイツはもう動かねぇらしいぞ!?」


 ライガットはそう言うなり警笛に耳を傾け、この攻撃の主犯であろう旧友の名を上げた。信じたくないように上げた名に、シギュンは「……でしょうね」と肯定した。
 ライガットは黙り込み、思考を巡らした。


 
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