君とお揃いの晩夏

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 ―ドゴンッ!


「うっ、きゃあああ!?」


 いきなり校舎の床が穿つ。なんで?え、私何か殺されそうになることした!?


「待ちなさい、枯捺さん!」


 なんで凛ちゃんに殺されそうになってんだろ!



君とお揃いの晩夏 6




「あばばばば」


 今日1日の整理をしよう。
 朝、初めて衛宮くんと話して、その次凛ちゃんと話した。(ちなみに凛ちゃんの背後に幽霊の気配を察知)
 昼、いつも通りパンとごるごるイチゴ(最後の一本)を飲んだ。
 夕方、殺されかける。

 いやいやいやいやいや。私何したんだろ!?……まさか!


「ごるごるイチゴがそんなに欲しかった!?」


 あれ大人気ジュースなんだよなあ!

 
「そんなはずないで、しょ!」


 ―バゴンッ


「うおっ!?」


 食い物の恨みなら確かにひどいだろうけどさ。違ったのか。
 て、言うか凛ちゃんの投げてるの宝石だよね?なんで地面を穿つし、爆発するんだろう。禍々しいよ!


「っよっと!」


 手頃の教室に逃げ込み、窓を開けようとした。二階なら、なんとかなる!
 ――はずなのに、開かない。


「な、なんで!?」

「結界よ」


 指に宝石を挟んだ凛ちゃんの声が三半規管に戦慄を与える。何が嬉しくて二日連続恐怖しなきゃいけないんだろう。


「り、凛ちゃん……」

「さあ、枯捺さん。答えて、」


 宝石が光る。


「あなたのサーヴァントは、何処にいるの?」









「……なるほど、結界、ですか」


 それも高度に編み込まれている。うーん、こういう複雑なのは好きじゃない。


「……《霊体不可》解除」


 身体を一気に元の魔力が駆け巡る。
 すみません、マスター。少し我慢してください。

 
「……よっと」


 《薔薇地獄》で結界を裂き、結界それ自体を破壊する。更に私の結界を瞬間的に上書きする。さあ、勘の良いサーヴァントとそのマスター。姿を現せ。









「っっ!」


 凛ちゃんがいきなり身体を押さえて倒れ込んだ。それに、なんだか息苦しさも感じない。


「だっ、大丈夫! 凛ちゃん?」

「っ、」


 ばっ、と腕を払う。
 なんだろう、プライドかな。


「なんで! なんで枯捺さんも衛宮くんもそう優しいのよ……っ!」

―……え?

「衛宮、くん?」


 ―ドゴォン!!


 いきなり校舎の裏から激しい揺れが響いた。え、何?何なに?ここ本当に日本?









「なるほど、アーチャーと来ましたか」


 最弱サーヴァントの私には正直分が悪い。三大騎士の内でも、アーチャーとは相性が悪い。前もそうだった。

 
「……エージェントか」

「……」


 これは分が悪いどころか最悪だ。
 機関銃を瞬間的に構え連射するが、アーチャーは僅かに身体を動かし避けるのみ。それどころか、気付けば剣がこちらに投げられていた。


「っ、」


 機関銃を上に反らし、飛来してきた剣を叩き落とす。今の衝撃で詰まってなきゃいいけど。


「ほう、やるな」

「……はい、あなたもです」


 勝ち目など元からないに等しい。
 アーチャーはニヤリと笑う。……なんて意地悪そうな笑い方。


―とりあえず、さっさとマスターが逃げてくれればいいですが……。


 可能性は、0だろう。
 はあ、とため息がこぼれる。どうしてこう強いサーヴァントばかりに当たるのだろう。マスターの運の悪さも、考えものだ。


 

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