君とお揃いの晩夏

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 旋回、右回り、撃つ。穿ち、石を弾け飛ばす。
 サーヴァント同士の戦いは、一般市民には手も足も出ないほど、早く、それでいて恐ろしかった。

 アーチャーとエージェントは何度も刀を交わらせ、互いに一歩も引かない体制を作る。


「ッ、」


 アーチャーはエージェントの刀を弾き飛ばし、一旦距離を置いた。が、それは愚策だった。
 エージェントは瞬間的に短刀から、大型のライフルに変えた。そして距離がどうこうの前に、アーチャー目掛け放った。


「っ! 常識破りのサーヴァントだなっ、本当!」

「お褒めに与り、光栄です」


 エージェントは更にライフルから、小さな短銃二本に変えた。銃口にアーチャーを正確に捉え、発砲する。

 
「エージェント!」


 寸でのところで指の動きを止め、声の主を見やる。そこには槇利枯捺と遠坂凛の姿があった。









「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ、ぅえっ」


 全速力なんて久々だよ。
 慌てて爆発音のしたところに凛ちゃんと一緒に(て言うより凛ちゃんが駆け出して)来た。……なんで戦場の後みたいになってんの?


「枯捺……」

「ッ、アーチャー……、何やってんの……」


 凛ちゃんもまたアーチャーさんを睨む。うえ、高貴で優しい凛ちゃんのイメージがガラガラガラ。……むしろこれが素じゃないのかな?


「……」

「まあ、お手合わせですかね」


 けろりとした顔でエージェントが言う。お手合わせにここら一帯半壊するやつ、誰がいるんだよ!
 アーチャーさんが訝しげにエージェントを睨む。


「……嘘をつくな」

「ついてないです」

「いや、ついている」

「ついてないです。つく意味がないです」

「……」

 
 アーチャーさんが呆れたようにため息をつく。……本当に敵対するサーヴァントなのかな?なんだか友人みたい。


「……枯捺さん」

「え、何?」


 息絶え絶えにそう言うと、凛ちゃんは私を軽く一瞥する。わあ、なんだかお嬢様、て感じがする。お嬢様か。


「あなた、聖杯戦争の目的は何?」

「ええ、目的?」


 まだ考えてたことを聞かれ、私は空を睨み上げる。うーん、まだ考えてるんだよなあ。
 するとエージェントが鼻で笑った。


「我がマスターに目的を問うのですか? 笑止! 我がマスターに目的などないです」

「……………………は?」


 アーチャーさんがポカーンとしたようにこちらを見る。いや、確かにマジでない。でもすぐ言わないでよ!


「…………枯捺さん」

「うっ、た、確かに目的ないけど……でも、凛ちゃんとは戦いたくない!」

「……え?」


 今度は凛ちゃんもぽかんとする。何だろう、この2人かなり似てる。

 
「凛ちゃんが私を殺すなら、まあ抵抗はするけど……でも、戦わない」

「……」

「それが、私の理想みたいなものだから」


 その言葉を出した瞬間、アーチャーさんが目を見開く。意外だったのかな?私は2人の方へ向いたまま、エージェントを見た。


「……勝手なマスターだ」


 はあ、とため息。
 ……駄目だったのかな?
 すると凛ちゃんが私の手を握ってきた。先ほどまでの殺意は、ない。


「それがあなたの理想なら。ねえ、枯捺さん」

「う、うん?」

「同盟、組みましょ」


 今度は此方が呆気を取られる番だ。困ったように肩を竦めるアーチャーさんに、含み笑いの凛ちゃん。……ねえ、これ本当に怖い。


「さ、今から作戦本部に行くわよ!」

「え、ちょ、凛ちゃん!?」


 作戦本部ってことは他に人がいるの?ヤバい、本当に大変なことになってきた!


「……」

「諦めろ、エージェント」

「……はあ、」


 
 

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