君とお揃いの晩夏

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「――貴様が、エージェントのマスターか?」

「え?」


 振り向いた先に、変な金ピカヘアーのお兄さんが立っていた。もしかして聖杯戦争のマスターかな?
 て、会ったら会ったで戦わなきゃならないんじゃ……!


「ふん、呆けた面だな」

「ええっと……?」

「まあ、よい。――我を愉しませろ」


 すると金ピカさんの背後から、幾重もの武器が空間を裂いて出てきた。え……、もしかしてサーヴァント?だったら、さらに危険だ!!



君とお揃いの晩夏 18




 ―金ピカさんに出会う少し前。


「悪い、枯捺! 今日買い物して帰るから、先に帰っててくれないか?」

「え? うん、いいけど……」

「ごめんな?」

 
 士郎に頭をポンポン撫でられて、私は思わず顔を真っ赤にして「う、うん」と弱々しく呟いた。うわあ、恥ずかしい……。

 士郎の家に住みついて早数日も経ったけど、相変わらずの関係に満足してる私がいる。近すぎず遠すぎずな関係。まあ、良い距離だって思うけど……好きな人だし、もっと親密になりたい、なんて思う。


「どちらかと言えば……士郎、セイバーさんと親密だし……。士郎はセイバーさんが好きなのかな……」


 好きな人が出来たらのあるあるだと思いたい。思わず「え、あの人のこと好きなのかな!?」て、ぶっ飛んだ妄想だと思いたい。


「――ぶっ、」


 ごつんと誰かにぶつかった。


「すみません……」

「ようやく見つけたぞ」

「………………へ?」


 頭を上げると、吸い込まれるような赤い瞳と太陽のような金色の髪の青年が立っていた。

 そして、冒頭に帰る。







「、へ? は、ちょっ……!」

 
 金ピカさんの宝具が光る光る。
 背後から剣・槍・戦斧・小刀まで選り取り見取り!……なんて軽口叩ける空気じゃない、これ本当に!!
 聖杯戦争初日に、ランサーさんに命を狙われたときと同じ、命の危機。愉快そうに嗤いながら、命を狙う。


「……ッ」


 逃げるが勝ち。だけど、今は分が悪いどころの話じゃない!
 まだ6時前の夕方時。私のいるところがいくら人通りの少ないところだって言っても、結界もないこんなところで宝具出すとか非常識!私まだ結界できないんだよ!?


「ふん、腰でも抜けたか」

「ぬっ、抜けてない!」


 勘に障らないよう叫んだつもりだけど、金ピカさんは不愉快そうに鼻を鳴らす。
 サーヴァントだとしたら……クラスは何だろう?8人いる内、4人と会ったから……消去法でライダーかな。いや、でもライダーっていう感じじゃない……。キャスターはない。アサシンにしては堂々すぎる。バーサーカー……みたいに、狂化もしてない。
 とりあえず分かるのは――危険なこと。マスターのみが見えるサーヴァントの数値。いやあ、よく分かんないんだけど……可笑しいくらい、強い。

 
―それになんだか俺様っぽい……。これは融通が効かないタイプだぞ!


 絶体絶命のピンチ。
 とりあえず……、この辺りは倉庫地帯で、入り込んでいる。上手くいったら逃げ切れる!


「っ、とりゃ!」


 思い立ったら吉日!
 サーヴァントの宝具が分からない内は、名誉ある逃亡の方がい――。

 ―ドドドドッ!!


「うわあ!?」


 選り取り見取りの武器が豪雨のように降り注ぐ。ちょ、マジで死ぬ……!
 逃げ足だけが早い私は、近くの倉庫に入り込み、慌てて違う出口に向かう。しかし、出口が鉄骨に塞がれている。


「え、えー……?」


 神様仏様、この際だれでも良いから打開策を下さい。

 あ、金ピカさん以外でお願いします。


「……鬼ごっこはもう終わりか? つまらんな」

「!」


 金ピカさんが唯一の出口を塞ぐ。
 ニッ、と口角をあげ、私を見下す。


「まあ、多少面白みがあるみたいだな」

「……どうも」

「但し、それだけだな」


 金ピカさんの後ろに更に武器が姿を現す。……これって、もしかして袋の鼠?


 

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