君とお揃いの晩夏
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「我の妃になれ」
選択肢
→断る
逃げる
殴る
ラリアット
「……え、無理です」
士郎一筋の私にいきなり何を言うんだ、この金ぴかさんは!
君とお揃いの晩夏 20
〜金色異端篇
「……断るのか?」
予想外の反応だと言わんばかりに金ぴかさんは端正な眉を寄せる。いや、むしろこっちがなんで?ってなるよ!
「……しかし、面白い礼装だ」
「……礼装?」
初めて聞いた単語を思わず繰り返す。礼装礼装礼装礼装。……なんだ、それ。エージェントも凛も何も言ってくれなかったし、特別な何かかな?メ○ルキングス○イム並みに貴重?……あんまり貴重じゃないか。
「……エージェントのマスターになるやつは本当に面白い」
くつくつと金ぴかさんが笑う。今からラリアットして間に合うだろうか?
そんな悪意に溢れた私の思考に気づいてないのかいるのか、金ぴかさんは堂々と胸を張る。弱点などないと言いたげに。
「枯捺。貴様の名、確かに覚えたぞ」
「え? ああ、どうも……」
敵ながら、少し照れるなあ。
「躯と化しても、美しそうだ」
やべぇ。俺様だけじゃ事足りず、ヤンデレ属性まであるのかこの男は!と、いうか昔の英霊だったら当たり前なのかな。昔の人の思考はヤンデレ寄りが多いからなあ。
「名を申した礼だ。我の名を言ってやろう」
「は、はあ……」
「我が名は、」
金ぴかさんの周りに風が吹く。
「――ギルガメッシュ」
前調べた本。かなりの英雄名を調べたが、必ず出てくる英雄中の英雄――英雄王の名。かのメソポタミアの地にて、その名を轟かしたウルクの王。半神の、英雄王。
「ギ、ギルガメッシュ……!?」
ラリアットしなくて本当によかった!
英雄王にラリアットとか、命知らずにも程がある気がする!
「ふん、今更我の偉大さに気づいたか」
その台詞に一気に冷めたことは許して欲しい。高慢にも限度がある。
金ぴかさん……もとい、ギルガメッシュは端正な顔を意地悪そうに歪める。うわあ、これが王様かよ。すごく意地悪!
「その無礼講、枯捺だからこそ許される行動だぞ」
「そ、そうなんだ……」
これは告白?プロポーズ?いや、もしや素なのかもしれない。……おさらいしよう。ギルガメッシュは俺様系ヤンデレ天然属性。……なんだかややこしい。
「……ところで枯捺」
「……へ?」
ずいっ、とギルガメッシュが顔を近づけてくる。ちょっ、いつの間に距離詰めてたんだお前……!
ギルガメッシュが訝しげにこちらを覗き込む。
「そろそろ礼装を何とかしなければ、貴様もエージェントも倒れるぞ」
「……え?」
だから礼装って何?
と、言ってやりたかったのに、意識が朦朧としてきた。ぐらぐら歪む視界の中、ギルガメッシュの金髪がぼやけて見えた。
○
「エンメバラゲシ様」
淡い浅瀬色の髪が、小麦畑で異彩を放つ。エンメバラゲシと呼ばれた年相応の男性は、淡い浅瀬色の女性を見やる。
「やあ、今日は快晴だね」
「エンメバラゲシ様の思いに空も応えてくれたのですよ」
「そういうものかね……」
エンメバラゲシは稲穂を指で掻き分ける。少し皺が出始めた指に、それは当たり悪く触れる。
「……ウルクの王が動き始めました」
「……あの男が?」
「はい」
女性は頷く。
エンメバラゲシはウルクの王を思い描き、彼だから仕方ないか、と吹く風と共に言葉を吐き出す。
「いずれここは戦場になりましょう」
「ああ」
「……私は、常にエンメバラゲシ様と共にあります」
女性は剣を掲げる。そんな女性に対し、エンメバラゲシは笑う。
「ありがとう、アルマ」
数千年後、冬木の地に降り立つ英霊の主格は呼応するように笑った。