君とお揃いの晩夏

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 運命を感じたことがあるだろうか。
 偶然と偶然が折り重なれば必然となり、必然と必然が折り重なれば運命になる。――勝手な解釈のようだが、俺にはそれがロマンチズムを感じさせる要因で、たまらく好きだったりする。



君とお揃いの晩夏 26
〜金色異端篇




 こう考えるようになったのも、多分、いや絶対枯捺が関係している。
 正義の味方、これは絶対なのだが、枯捺を前にすると絶対が更に強制力を持つ。絶対なる、ではなく、ならなくてはならない、に変わる。


「――……んっ」


 枯捺の漏らした吐息に思わず肩が震えた。明け方の7時から就寝した枯捺は、幸せそうに俺の横で眠っている。

 ……可愛い。たまらず頬に触れそうになったが、寸でのところで思いとどまった。


――俺が枯捺に触れてもいいのか……?
――そもそも、近くにいてもいいのか?


 弱いくせに、と何処か自分を嘲る嗤い声が聞こえる。
 確かに。俺は何度も死にかけたし、何度も殺されそうになった。その都度、何度セイバーに助けられたことか。思い出すだけで心苦しくなる。
 正義の味方になりたいと自分は願っている。しかし、現実はうまく事が運ばない。苛立ち、焦りが、積もる。


――……、駄目だな、俺。


 枯捺から離れよう。そう思った矢先、枯捺が俺の方に手を伸ばしてきた。


「……さ……」

「……?」


 何やら言葉を呟いている。
 俺は枯捺の唇へ耳を近づけ、蚊のように震える言葉を聞いた。


「……お父、……さ、ん……」


 ……ああ、思い出した。
 俺が、こいつを目で追い出した理由を。
 俺はその気持ちを振り払うように、枯捺の手を握り締め、眉間に当てた。


――同情が恋心に変わるなんて。
――俺は、俺は……。



――こいつを守れるくらい、強くなりたいんだ……ッ!


 誰にも渡したくないなんて、仕様のない我が儘だと笑って欲しかった。







 ギルガメッシュは愉悦に顔を歪ませていた。彼が身に纏う金色の鎧も、血のように紅い瞳も、彼の端正な顔を歪ませた。それでも尚美しいのは、彼だからこそだろう。
 形のいい唇から、たまらずため息が漏れる。


「……くくく」


 くつくつと喉を鳴らし、ギルガメッシュは高らかに笑い出した。


「ははははは!! 何たる礼装、何たる力! どこを見ても、貴様の報告にかすりはせんぞ、綺礼」

「……そうかもしれんな」


 暗闇から言峰綺礼が姿を現す。
 相変わらずつまらぬ男だな、とギルガメッシュは僅かに悪態を吐きながら、ソファーに深く腰掛けた。


「興味はそそられぬのか」

「ああ。……と、言いたい事だが」

 
 ぴら、と言峰はギルガメッシュの前に紙を放り投げた。それはかつて彼の前に立ちはだかったマスターの1人、間桐雁夜の調査書であった。


「間桐雁夜には、幼い守るものがあったそうだ」

「ほお、」

「間桐桜と……槇利枯捺」


 ギルガメッシュは薄く目を光らせ、口元を歪ませた。
 そして頬杖をつく。


「成る程、……今宵の舞台、主役は枯捺になるか」

「……今夜仕掛けるのか」


 言峰の口から呆れた声が漏れる。ギルガメッシュは愉悦感に満たされた心のまま、まるで無邪気な子どものように笑った。


「ああ、早ければ早いほど熟成された舞台が見れる」


 まあ、とギルガメッシュは言葉を区切り、天井を見上げた。


「悲劇も喜劇も惨劇も、熟成された舞台では腐った劇になるがな……」



――――
《ちょこっとメモ》
只今
士郎→←枯捺←ギルガメッシュ
の三つ巴が激しい。
後数話で金色異端終わります。

 

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