君とお揃いの晩夏
□30
1ページ/1ページ
「え、ええー!? ちょっとエージェント! 今の! 今のシーン! 明らかに士郎とギルガメッシュが本気の撃ち合いする場面じゃんかばかあ!」
「枯捺。考えてみてください。こんな所でギルガメッシュが本気を出したら……家が吹き飛びますよ?」
尤もなことを言われた。
君とお揃いの晩夏 30
〜金色異端篇
「だからって、ランサーさんを……」
ちらりと横目でランサーさんを見る。ギルガメッシュとの衝突により、完全に伸びきっている。冷静に考えたら…エージェントの腕力、すごいんだな……。
士郎が困ったように此方を見て、「それもそうだな」と肯定した。むぅ……、納得できないのは私だけか。
「ちょっと何よこれー!?」
玄関近くから凛の驚きに満ちた叫び声が聞こえる。玄関、てことはランサーさんとエージェントが戦ってたんだから……、損害酷いのかな。
まあ、でも、とりあえず……、これ、どうすればいいんだろ……。
○
―居間
先ほどから凛にあーだこーだと説明しているが、凛は眉間に皺を寄せたまま此方を睨む。無理したな、と、何故即知らせない、と凛は訴えているのだ。うう、申し訳ない……!
でもギルガメッシュの圧力は凄かったのだから、怯まなかった点だけは褒めてほしい。
凛はそんな私から目を逸らし、はあ、と呆れた声を漏らす。
「それで、…………何でそいつらがそこにいるのよ……!」
「え? あはは、えっーと…………」
凛が指差す方向に、金ピカの英雄王と青タイツのケルトの英雄が横たわっていた。……まあ、服は何故か2人が伸びきった時に変わり、ギルガメッシュは学生服みたいなもの、ランサーさんはアロハシャツになっていた。
外に置くのもなんだかな、と思い中に入れたのだが……どうやら凛と、凛の後ろに立つアーチャーさんには不満のようだ。む……ダメだったのかな。
「マスター凛、そうかっかせずとも」
物腰柔らかくエージェントが凛にお茶を差し出す。いや、どう考えても2人を気絶させたエージェントのせいだ、と言えない。まあ、言わずもがなだし?
そんなエージェントに、アーチャーさんはじろりと視線を送る。
「エージェント、元はといえば貴様が」
「う、ん……、?」
ギルガメッシュが呻き声を上げ、うっすらと目を開ける。
気が付いた、なんて場違いな心配をすると、ギルガメッシュは僅かに眉を潜める。
「……度が過ぎるぞ、エージェント」
「カーテンコールは間に合ってますので」
「貴様……!」
未だランサーさんとの衝突によりダメージが大きいのか、ギルガメッシュはよろよろと立ち上がり、《王の財宝》を開こうと……て、
「ダメダメダメ!! ギルガメッシュ、やったらダメ!」
《鷹破り》に魔力を流し込み、ギルガメッシュの魔力を気泡へと帰す。
不満そうに、子どものように、ギルガメッシュはエージェントを睨む。
「……枯捺に免じ、此度は赦す。が、次はないぞ……!」
「それはどうも」
エージェントはギルガメッシュの前にもお茶を差し出し、流れ作業でランサーさんを蹴る。酷い。しかし、それで起き上がるランサーさんもどうかと思う。
「さて、じゃあ本題に入るわよ」
凛がランサーさんとギルガメッシュを交互に見る。尋問しているみたいで、少し緊張する。
「目的はなに?」
「枯捺」
「そこの嬢ちゃん」
嫌なモテ期が来たものだ。
魔力目当てなんて、最早笑うしかできない。
「……真面目に答えなさいよ」
「至極真面目だが? 仕方ない、低俗の脳みそには理解できぬか」
「低俗ですってぇ!?」
凛が激昂するが、それでもお構いなしとギルガメッシュは口を開く。
「我が后に枯捺を迎えにきた。ついでに、魔力も、な」
「「「はあ!?」」」
セイバーさんと凛と士郎が驚きの声を上げた。これが普通の反応だもんな。うん、そうだよね……、うん……。