君とお揃いの晩夏
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「我が后に枯捺を迎えにきた。ついでに、魔力も、な」
「「「はあ!?」」」
父さんへ。サーヴァントの奥さんを断るにはどうしたらいいですか。
君とお揃いの晩夏 31
〜金色異端篇
状況を整理しよう。
一、何故かギルガメッシュに惚れられている。
一、ギルガメッシュ、まさかの士郎の前で私を嫁宣言。
一、ちなみに士郎は私の好きな人(ここ重要!)。
…………あ、やばい。士郎の前で言うとか、なんて空気が読めない駄目な英霊なんだ!誤解されたらどうするんだ!?
「……」
案の定、士郎を初めとしてセイバーさんと凛は硬直している。状況整理しているのだろう、邪魔はいけないかな。
まあ、エージェントとランサーさんは驚きのおの字すらないけど。
「……枯捺」
士郎がギギギ、と歪な音を立てながら此方を向く。そしてゆっくりと肩を掴んできた。なんだろう?
「……ギルガメッシュのこと魔力だと好きだとか桁外れな好意だと」
「士郎!? 言葉の意味が全然解らないよ!?」
桁外れな好意てなんだ!ギルガメッシュのこと魔力とかなんだ!?
落ち着いて、と肩を揺すると、士郎は深呼吸をした。混乱してたのかな。
「……枯捺、ギルガメッシュのこと、なんだ……好きなのか?」
「え、普通」
確かに殺されそうになったけど、好きでも嫌いでもどっちでもないなぁ。まあ、良くても良い友達じゃないのかな。
そんな私の発言を、ギルガメッシュが不服だと言わんばかりに言葉を返す。
「枯捺。我は貴様を低俗な雑種の溜まり場まで運んだのだぞ。その恩誼を仇で返す気か?」
「え?」
雑種の溜まり場?
うーん。あ、もしかして公園のことかな。確かアーチャーさんが私を公園で発見したって……。
「え? あれ、ギルガメッシュがやってくれたの?」
「我は寛大だからな」
言葉のキャッチボールができない。変化球ばかりで困るなあ。
「えっと、ありがとう」
一応笑顔を振りまいとく。敵とはいえ公園まで送ってくれたんだし、良い、奴、なんだろう。
そんな私を、ギルガメッシュは呆然と見る。
「……ギルガメッシュ?」
「ッ。な、なんでもない……ッ」
口元を押さえて顔を真っ赤にさせるギルガメッシュ。おお、そんな顔できるのか、なんて呆けた事を考える。貴重だからカメラ欲しいなあ……!
そんなことを考えていると、急に私の身体が後ろに引っ張られる。と、同時に背中いっぱいに広がる熱……とちょおおお!だ、だだ、抱き締められてませんか私!?士郎に!(ここ重要!)
「……ギルガメッシュ、枯捺は渡さないからな」
「ふん。紛い物が、よく吼える」
「うるせえ! いいか、よく聞け!」
ぎゅっと更に士郎と密着する。心臓が爆発するー!!
「枯捺は――俺のだ!」
心臓がバクバク言ってる!正直生きてるのが不思議な…………………………ん?今、士郎…なんて?
「お前みたいなやつに、枯捺を渡すか!」
「ふんっ、我のものを奪うとはいい度胸だな」
「奪う? 元から取れていないくせに、よく言うぜ」
「貴様……ッ!」
「お前……ッ!」
「すみません、お二方。枯捺の頭がオーバーヒートしておりますので、しばし休戦を」
「「うるさい!」」
「……ほお……!」
「待て、エージェント! お前が入っても無意味だ!」
はっ、今まで頭が付いていけてなかった。……えっと、つまり……つまり……つま、り…?
「……私はどうすべきなの?」
答えが見つからないよ!
夢落ちとかだったら納得して泣いちゃうけどね。士郎が私を嫁宣言なんて耳が可笑しいのかなー……、耳鼻科行った方がいいのかな。
「ちょっ、枯捺! このバカたちを何とかして!」
凛の切実な叫び声に、私の鉄拳がバカたち(士郎ギルガメッシュエージェント)の頭を舞った。