君とお揃いの晩夏

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「もう、ちょっとくらい静かにできないのかな……」


 こっちは馬鹿な脳みそをフル回転させて状況把握に忙しいってのに、なんでこうサーヴァントは思いやりの足りない人たちばっか!
 私はたまらずため息をこぼした。目の前で床に突っ伏す、ギルガメッシュ、エージェント、ランサーさん(巻き込んだ)を見ながら。(士郎は強く殴れなかった)


君とお揃いの晩夏 32
〜金色異端篇



「ふっ、照れておるのだな、枯捺。良いぞ良いぞ、存分に悩み、我が妃となれ」


 結果的に妃にならなきゃならんのか。
 ギルガメッシュがおかしなことを口走ると、再び士郎がギルガメッシュに噛みつく。「誰がお前の妃になるかよ!」と。
 確かに私は士郎が好きだから、当然お断りなわけなんだけど、こいつ(ギルガメッシュ)、……全く人の話を聞かない!
 と、そんなときエージェントの助け船が入る。


「ギルガメッシュ、生憎だが、マスターは既に……、これがいます」


と、中指を立てる。
 ……確かにギルガメッシュをぶっ飛ばしたいけど、流れ的に言えば小指を立てるところだよ……!
 そんなエージェントに、凛が「何やってんのよ」と吐息を漏らしながら呟く。そして優雅な足取りで私の近くまで来て、するりと肩に腕を回す。おお、ドキドキしちゃう……!


「ギルガメッシュ、枯捺は既に将来を誓った仲の人がいるのよ」


 いませんけど!?
 なんて叫べない。凛が地味に肩に力を入れてくる。あははは、……脅しか……!


「む、誰だ」

「あら、あなたの近くにいるじゃない」


 うん?とギルガメッシュが自分の周りを見渡す。近く……って!?


「俺!?」
「士郎!?」
「貴様か!」


 全く違う反応の声が同時に木霊する。
 ちょっと凛!と抗議の視線を送るが、何故か笑っている。


――もしかして、凛……楽しんでる?


 人の不幸を見て笑うな!
 そんな凛の言葉を真に受け、ギルガメッシュは士郎に今にも飛びかからんばかりの形相で士郎を睨む。次いで苛立たしげに、忌々しく開口する。


「雑種。誰を許しを得て愚劣な真似をするかっ」

「愚劣な真似って……、お前が言えるのか」


 士郎が僅かに憐れみの視線を送る。
 英雄王なんて名ばかりじゃないのか、と遠回しに言っていた。――否定しかねない。私だって「え?マジで英雄王?」て思ったもん。
 (自称)英雄王ギルガメッシュは、士郎の言葉を一蹴する。


「笑止、世の摂理は我に従う。我が愚劣な真似などするはずがない。何故なら、我がルールだ!」

「「「……」」」


 開いた口が塞がらない。
 てか、ジャイアニズムってこんなに腹立たしいんだ……!目の前で高々に言われたら張っ倒したくなるな!!
 そんなとき、流れ弾を食らって倒れていたランサーさんがギルガメッシュの近くまで歩み寄る。
 
「いてて。……あのよ、俺たちが来たのはお嬢ちゃんの力が欲しいからだ。あいつがそう言ってたんだろ」


 む、“あいつ”とな?
 ランサーさんのマスターなのだろうか、はたまたギルガメッシュ?それとも実は2体同時使役とか?……とりあえず化け物なのは変わりないか。


「あいつから何の指図も受けていない」

「は?」

「我の単独行動だ」

「巻き込むなよっ!」

「贄はなくてはならん」

「生贄だと!?」


 ランサーさんがギルガメッシュに吼えかかるが、ギルガメッシュは素知らぬ顔をしている。つかこっち見んな……!
 どうにかギルガメッシュに帰ってほしいし……、凛の意見に乗ってみるか。


「……あのね、ギルガメッシュ」

「む、なんだ?」


 ギルガメッシュが端正な顔をこちらに向ける。イケメ……いやいや騙されるな私。私は息を飲み、なんとか言葉を綴る。


「私、士郎をお嫁に貰うからギルガメッシュの妃にはなれないの」


 よし言ってやったぞ!
 ………………なんでみんな黙っているのか謎になった。

 

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