君とお揃いの晩夏
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何言ってんだ枯捺のやつ!?
はあ、言葉の文の間違いか?それとも単なる間違いか……?
……ああ゛もう、小首を傾げながら周りを伺うな!可愛すぎだろ!
君とお揃いの晩夏 33
〜金色異端篇
えっと、と枯捺が口ごもる。目を何度も慌ただしく動かし、周りを見渡す。何でみんな黙ってるの?恐る恐る枯捺が口を開くとわなわなと体を震わしていたギルガメッシュが勢いよく立ち上がる。
「貴様雑種! いや贋物め! 枯捺の伴侶になるとは愚劣な真似を!」
「え、俺喜ぶポイントなのか」
「行くぞ雑種! 《王のざ(ゲート・オ)》」
「あなたがふざけるな」
がつんと頭をエージェントに殴られ、ギルガメッシュは地面に痛い抱擁をする。つか、まじで痛そうだな……。
ぎっ、とエージェントを睨むギルガメッシュが、腹立たしげに口を開く。
「貴様、昔からの仲とはいえ王の俺に逆らうとは一体如何なる罰を用いようか……!」
「知らん。ランサー、ギルガメッシュを連れて帰ってください。縄はあげますんで」
ギルガメッシュをぐるぐるに巻きつけながら、エージェントはランサーに指示をする。貴様貴様と何度も繰り返すギルガメッシュが少々哀れだ。が、手伝おうとする俺の行く手に、遠坂が立ちはだかる。
「衛宮くん。あなたにはすることがあるわよ」
「は?」
「言わなきゃいけないこと、あるんじゃないの?」
くいっと指さす方向には枯捺の姿。俺は遠坂の言いたいことが即座に分かり、鼓動が素早く脈打つ。言わなきゃいけないこと。あるさ。たった一つ、言わなきゃいけないことを……。
それにはギャラリーが多すぎる。
俺は立ち上がり、枯捺の前に立つ。未だ自分の言った言葉が分からない枯捺は不思議そうに俺を見上げる。
「……士郎?」
言いたいこと。それは、昔から抱いていたただ一つの想い。焦がれ葛藤し、ずっと逸らし続けた現実。
俺は枯捺の手を握りしめ、立ち上がらせる。そして、堂々たる足取りでその場を後にする。効果音はもちろん、慢心王の怒号だ。
「ついにマスターが男になるのですね、リン」
「そうよ、覗きたいのは山々なんだけど、まあ、衛宮くんの裁量次第ね!」
「贋物め! 覚悟をしているがいい、いつか貴様を地獄にたた」
「五月蠅いです」
ごちんと士郎と枯捺の去った部屋に再び鈍器でギルガメッシュの頭を叩く音が響く。痛いではないか、たわけ!ギルガメッシュの非難に聞く耳持たないと言った様子でエージェントはつーんと視線を逸らす。
「はあ、やはり口にガムテープの一つや二つお世話になったほうがいいですよ」
エージェントがそう言うと、ギルガメッシュは小さく鼻で笑う。
「嘯く貴様の口にでも貼れば良かろう」
「……」
「貴様が下せぬのは、必ず最終決断だ。己が人生を左右する決断は必ず下せぬ。くだらぬ生き方をしてきたのは、誰よりもおぬしではないか、――アルマ」
明かされた真名より、エージェントはギルガメッシュが饒舌に語りかけてきたことに驚いていた。しかし、エージェントはどうでもよかった。
「はいオッケーです。ランサー、お手伝いしますので、この馬鹿王を連れて帰りましょうか」
「あ。ああ」
再びギャーギャーと騒ぎ出したギルガメッシュに、エージェントはため息をこぼす。なんでこう我が侭なんですか、そう問いかければギルガメッシュは当然だと鼻を鳴らす。
「俺がルールだ!」
「くたばれ、ギルガメッシュ」
がつんと三度目の鈍器は、ギルガメッシュから意識を奪うという戦果を挙げた。