テニプリ

□脳内天国、フィルターどうぞ
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「コシマエ、勝負コシマエ!」

「……嫌だ」

「何で!?」


 当たり前だ。越前リョーマはラケットを振り回す四天宝寺の少女を横目で見やり、帽子のキャップを深く落とした。






 大体、女の子と勝負したらボロ勝ちに決まってるよ。なに、ドエムだったの?
 皮肉たっぷりの台詞に菜摘は若干しおらしくなる。ただ、それもコンマ三秒の話し。んなわけないじゃん、と頬を膨らませて言うものだから、リョーマは更に眉間に皺を寄せた。
 大体なんで四天宝寺のあんたがここにいるんだよ。リョーマは再びキャップを下げる。


「白石先輩が手塚先輩と練習試合組んだって言ってたよ?」

「……で、他の部員がいないみたいだけど」


「私はお姉ちゃんのお手伝いを兼ねて早めに来たんだ!」





 ああ、そ。リョーマはアスファルトのように熱い菜摘から視線を外した。ほんと苦手だ。あまり社交的な性格ではないリョーマと社交的過ぎる菜摘は磁石で言えば対極の位置に位置していた。
 性格上合わないとか、そんな問題は確かにない。が、それでも苦手なものは苦手なのだ。例えるなら、目の前で犬を見たようなものだ。猫を飼っているからか、犬派ではないが犬嫌いでもない。つまるところ、好きだけど嫌いではない、な曖昧な表現に繋がるのだ。





 コシマエ、コシマエ。ねえ、勝負。
 雨の日に捨てられたら子犬のような眼差しに、リョーマはこれ以上下がることのないキャップを深く握りしめたまま、菜摘を見つめる。


「……一戦だけなら、いいよ」

「本当に!?やっりー!コシマエありがとう!」


 どうこう言いつつも満更でない自分に腹が立つ。やっぱりアスファルトだ。ぎらぎらして、熱を大量放出して、水逃げなる陽炎を巻き起こす多彩な顔をするアスファルトによく。
 リョーマは手に持っていたスクールバックから予備のキャップを取り出し、菜摘の頭に乗っけた。わぶ、と女性らしからぬ声に笑みをもらす。





「菜摘、暑いから被っときなよ」

「わ、コシマエのとお揃いだ。ありがとう!」

「……あとさ、」


 リョーマはスクールバックをフェンス近くに置き、今度は帽子のキャップを持ち上げる。不敵な笑みは、この試合の最後を見据えているようだ。


「俺、コシマエじゃなくて、越前リョーマ。次間違えたら、勝負してやんないから」


――――
コシマエ万歳!
リョーマでも難しいですね……

130610

 

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