テニプリ
□悪魔が天使に恋をした!
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※切原赤也視点
赤也の眼綺麗。きらきらしてる。おまじない?
一つ下の菜摘がんなこと聞いてきた。ので、解答に窮した。悪魔の嘶きを上げて戦い終わった後だというのに、なんで菜摘はきらきらした眼を向けてくんだよ。可笑しいだろ。
俺は解答がアホらしく思い、言わねえと口を紡いだ。
「ええーっ!赤也のケチ!鬼!悪魔!」
「お前実は分かってて言っただろ」
「?何が?」
頭を傾げる菜摘の仕草に、俺は後頭部を掻き視線を逸らす。ちっこいくせに肝の据わったやつだな、本当。
当てたら教えてやるよ。え、それ意味ないよ。
だから言ったんだ察しろ。俺は菜摘を四天宝寺の方に送り出し、自らは立海のレギュラー陣が陣取るエリアに歩み出す。
「…大体なんで赤也なんだよ、俺一個上だぜ…」
まあ、青学に姉ちゃん居たけど、確かに妹ってのがよく分かるわ。厚顔無恥に近い横柄だって許される謎。いや、俺でもあの姉ちゃんに反論できないけど。怖いし、グラマーだし。
そんな俺の肩を、部長が叩く。
「どうだった?」
「どうだった言われても…菜摘やつ強くなってるっスわ」
そう答えた俺を、部長は奥の見えない笑顔で歓迎した。あのぅ、部長?疑問を抱く俺の肩を何度か叩いた部長は、ご機嫌そうだった。いや、ご機嫌というより面白がるに近いな。
俺は別に、菜摘が、なんて言ってないけど?
謀られたとこの瞬間は思った。誘導尋問じゃないのか、それ。口が裂けても言えぬ単語を喉の底に沈ませ、俺は口元を押さえ弁解を探す。
「いや、さっき練習試合やったのが菜摘だったんで…ええっと」
「分かっているよ。分かっていて聞いたんだから」
「……酷いっす」
いやでもね、他のメンバーでもよかったし、誰が?なんて聞いてくれると思ったからさ。
いいや、この人はそんな期待微塵も抱いていない。俺が真っ先に菜摘の名前を紡ぐことが分かっていたのだ。流石は神の子、隠し事は無理なのだ。
「それで、実際のところどうなんだい?」
「そりゃあ、オールラウンダーのくせにスタイルが激しいというか過激というか」
「いいや、そんなことは見てたら分かるよ」
「じゃあ、どれっすか」
勿論、可愛いか可愛くないか。
初めて部長が鬼に見えた。今までも怪しい面は多々あったが、こうまでばっさり深淵を掘り下げる行為を、いくならなんでもあっさりしすぎではないだろうか。
そんなこと。――微塵も考えたことないとは言えない。何せ野獣のように右往左往して飛び回る菜摘も、試合が終われば1人の少女に帰るのだ。その際見せる少女の面に、ときめいたことがある。
「質問が悪かったかな」
「そ、そうっすよ!もう、もっとまともな」
「好意を抱いているか、可愛いと思っているかの二択にしよう」
四面楚歌っすね分かります。もう表情がイエスかはいのどちらかしか望んでないのが、ありありと分かってしまう。
そんなのもちろん、俺は目元から熱が顔中に移るのがよく分かった。
「……可愛いっすよね、菜摘って」
様々な思いを含ませた俺の言葉を、部長は笑顔で受け止める。
らしいよ、菜摘ちゃん。
部長の言葉に俺は目を丸くした。え、まじで。部長の視線の先を、まるでブリキ人形のように振り返る。さっきまで顔中に集まっていた熱が、マグマのように荒ぶる。
「……えっと、なんだかごめん?いや、邪魔したのかな…」
「ぅっ、」
うわあああああ!
俺は全力でコートから逃げ出した。
それからの練習は、何故か菜摘の周りに四天宝寺のレギュラー陣が陣取るという行為により、ままならなく終わった。
――――
どうして女々しくなるの。
130610