テニプリ

□ヘタレ時々男前
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※忍足謙也視点

謙也はね、ヘタレだと思うんだ。
突然の宣告に、俺は目を丸くした。それを本人の前で言うか?多少常識のあるものは本人の前では言わないだろう。なにせ、褒め言葉ではないのだから。


「えげつな。菜摘、そういうんは本人の前で言うたらあかんやろ」

「財前…!」


なんて出来た後輩なんや!これからはお前の我儘一個や二個聞いてやってもええわ!
財前はそんな俺の感激をよそに、菜摘に少し尖り口で言葉を綴った。
言葉が足らんで。
………は?俺は僅かに停止した。


「謙也さんはヘタレやない。究極のアホくされヘタレやで」

「あ、そっか」

「財前ぇえええんん!!!!お前のが!一番!常識がないわ!」

「あ、居たんすか?」

「そこに直れや…!」


どうしてこう俺の後輩たちはこうも曲者揃いなんだ。せめて1g、いやもうミクロ単位でもかまわへん!尊敬してくれる優しい精神持ち合わせてくれれば…!多少は!多少はええ後輩や思…わへんかもしれへんけど思うように努力するわ!


「俺はヘタレちゃうわ!」

「ええー、信じられないよー」

「謙也さん、根拠のないことは言わへん方が身のためっすよ」

「身のため!?意味わからん!!」


財前の言葉に俺は数テンポ遅れて、ぴんとまるでピアノ線を張ったように発想が浮かんだ。
根拠。つまり、根拠を見せればいいのか。ヘタレではない根拠を…!
そうと決まれば、浪速のスピードスターの名に恥じないよう行動あるのみ!…しかし、何をすればええんや?
例えば、ゴミ拾い?いや、それはただ良心的なだけ。
例えば、女の子を口説く?せやったらテニスする方がええ。
試合に勝つ?いやいやいやいや…もはやヘタレ関係あらへんがな。
ああー、もう!


「どないっしろっちゅー話や!!!!」

「なにが!?」


つい言葉に出てしまった。おっと、あかん。このままではさらに変な先輩という不名誉な渾名まで広がってしまう…!(その点はすでに手遅れなのだが)
菜摘が怪訝深くこちらを覗き込んでくる。……ここでピンときた。


「(せ、せや!菜摘のこと、好き言えばええんやないやろか!?)」


きっと誰もが意味がわからないと困り果てるだろう。せやけど、この考えに至ったのには理由がある。
意気地なしの意味も込めてあるヘタレの単語を払拭するには、そう、根性ある行動をすればいい!
そして俺にとって意気地のある行動は、そう、好きなやつである菜摘に告白しようという発想である。
行ける!男見せるで、忍足謙也!!!



忍足謙也は混乱していた。
それは、呆然と立つ財前が目に見えるようにわかってしまうほど、謙也はひどく慌てていた。


「(根性見せる行動でも考えとんやろか。せやったら、部長にイタズラするとか、職員室で叫ぶとか、ホモップルの間に入るとか、なんかあるやろ)」


財前は欠伸を決しに隠した。
如何せん、飽きてしまった。其れを証明するように、菜摘は地面にテニスラケットの絵を書き出していた。
いや、意外にうまいぞこいつ…。
財前が今度は菜摘の絵に視線を落としたとき、謙也が動いた。


「聞いて驚けや!」

「わあ凄いっすわあ」

「今ちゃうわ!しかも驚くならもっとオーバーリアクションしろや!」


はあ、で?
せかせかと絵を描く菜摘を放っておき、財前は促した。早く終わらせろ、そう思いながら。
謙也は誇らしげに、それでいて少し照れたように口を開いた。


「しゃ、しゃーないから俺の好きなやつ!宣言したろやないか!」

「あー」


そう来たか。
財前は、呆れ果てた。どうせ菜摘と言うオチなのだろう。……と、そこで気付く。
なるほど、確かに根性のある行動だ。なにせ本人の前で言うのだこら、確かに凄いことだが…。どうしてそうなった。やはり意味がわからなかった。


「ええか、俺の好きなやつは」

「こら、菜摘。地球さんにお絵描きしとらんと、早う練習に戻り」

「そいつや!」


タイミングよく現れた白石を謙也は……指差していた。漂う空気は、一気に紫色の世界に変わる。
なんで、菜摘場所変わっとんのや…。
テニスラケットの絵を描いていた菜摘は、ついにはコートまで再現し出していた。それも特大のサイズで。


「け、謙也…」

「なんでやあああああ!!ちゃう!そんな考えお前に起きひん…ってなんで距離取るん!?」


うっわあ。
財前はため息を吐き出した。また暫く部活が煩くなる。すこし、からかいすぎたせいだ。次からは自重しようか。
ぴょこんと、財前の横に砂まみれの少女が立ち上がる。


「できた!見て見て財前!テニスコートの再現…、?なんで白石先輩と謙也が鬼ごっこしてるの?」

「…度胸試しとちゃうん?」


え?
菜摘は分からないと言った様子で小首を傾げた。
しかし、ほんとに上手いな。
テニスコートを駆け回る2人の先輩を石にみたて、菜摘は自らが描いたコートに石を置いた。



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title by「金髪少年」

書き方がすでに迷子という、ね。
書いてないとわかなくなりますね。あと、うち間違えも多くなりますしね。

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