青の太陽
□きらきら星
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「父さん……!!」
いつもはクソジジイと呼んでいた藤本のことを、初めて呼んだその名は、あまりにも遅すぎた。
その日は曇天空によく似合う雨が、墓地へと降り注ぐ。喪服に身を通した幾任もの人が、すすり泣き、号泣しながら歩んでいた。傘に当たる雨音が、涙のように見受けられる。
捺佳は隣に立つ雪男を見た。
「ゆ、雪くん……」
燐をただただ見つめる雪男に、捺佳は少なからぬ恐怖を抱く。
昨日の出来事に立ち会っていた捺佳は、どことなく雪男と気まずい雰囲気になっていた。
(……う、うう。雪くん怖いよ……!)
無言なのが更に怖い。
捺佳ががたがた震えていると、ぽんっと雪男に肩を押された。えっ、と小さく言葉を漏らし、雪男を見やった。
「ゆ、雪く、」
「兄さんの所に行ってあげて」
「えっ」
で、でも、と捺佳は雪男を見た。はからずしも、燐と何となく気まずい――双子と気まずくなった――雰囲気だった。自分だけかもしれないが。
「大丈夫、」
雪男が再び背中を押す。
「捺佳と兄さんには、笑顔がよく似合うよ」
「……! ありがとう、雪くん!」
捺佳は雪男に背中を押され、勇気を出して燐の元へ駆け寄った。赤い番傘デザインの傘が、彼女のように輝いていた。
「……」
そんな捺佳の背中を、ただ雪男は悲痛な面持ちに見つめるだけだった。
3:きらきら星