青の太陽
□欠ける月
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―早朝
少し、暖かくなってきた。
春の陽気が楽しげなテンポを刻みながら、新しい芽吹きを誘う。
そんな暖かな空気の中を、久木捺佳は散歩がてら辺りをキョロキョロと見渡す。とある目的の人物を探していた。
「……燐くん、どこにいるんだろ……」
捺佳は自然と無意識に、そう呟いた。
捺佳は彼女は同じ修道院に住む双子の兄、奥村燐を朝の日課である散歩のついでに探していた。
『まあ、あいつのことだ。そこら辺に居るだろうから心配すんな』
と言われても心配なのは変わりない。捺佳は溜め息がこぼれた。
「本当、燐くんどこにいるの……」
と、そのとき公園から数人の男子が、顔や身体に怪我をして飛び出してきた。
捺佳は吃驚して硬直していたが、意を決してそっと公園を覗き込んだ。
そこには、鼻血を荒々しく拭う男子、奥村燐がいた。足元には、怪我をした鳩。
(燐くん、もしかして鳩を助けてたの……?)
捺佳はぎゅっと胸元の服を握り締めながら、探し人であった燐の名を、高々と呼んだ。
「燐くん!」
振り向く、燐の何ともいえぬ顔に、捺佳は大体のことは悟った。とりあえず、と、捺佳は燐のもとへ駆け足で駆け寄った。ポケットに、ハンカチがあったはずだ。
2:欠ける月