手を伸ばしたその先の
□序章
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妙に湿った山道をジョギングの格好で走っていく勝呂竜士
霧がたちこめ朝日なんて入りこめる隙はない
そんな山になぜ彼が登っているか…
「よぉ」
少しの汗を流しながら顔を上げる竜士の視線の先には、同じ様に少しの汗を流している少女
木の太い枝に足を駆け、筋トレをしている最中なのだろう。その近くにはタオルが置いてあった
そしてその少女は竜士を見ると目を少し大きくし、口を開いた
「おぉ!久しぶりやなー」
にこりと笑う少女に安心したように竜士も笑う
「どうしたん?てか久しぶりやなー」
駆けていた足を降ろし、竜士と向かい合う
「ちょぉ挨拶しとこ思うてな」
「挨拶?」
「俺、春から東京の正十字字学園に行くわ。せやから…京都を離れる」
少し驚き、黙った少女は柔らかく微笑んだ
行ってらっしゃいと言って
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