(NL)

□背伸びをしても届かない
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ある日の午後。


空を見上げれば、一面の桜が舞っている。

「綺麗...」



桜の木の下で愛しい人を待つ。


早く...逢いたいな。




「待った?」


「ううん、今来た所。」



遠くから柳が、軽く手を振って走ってきた。

腕時計を見る。
時間は、待ち合わせ時間の20分前だ。



「フフ...早いな。」


「だって蓮二に逢えると思うと...」


「そうだな。俺もお前に逢いたかった...」




二人がいるのは、学生の頃よく利用していた、図書館の前の桜の木の下。そこで待ち合わせ。

此処の景色は変わらずとも、気が付けば二人は大人になっていた。


月日が経つのは早いものだ。



「蓮二...」


桜乃が背伸びをし、柳の首に手を回す。
そして柳が屈み込み、桜乃の頬にキスをする。



「さく、」


「逢いたかったよ...」



もっと側にいたい。
ずっと一緒にいたい。
いつも想ってて。
愛しくて。大切で。

あなたが帰った後は。
直ぐにまた逢いたいなんて思った。




久しぶりに逢った嬉しさで、桜乃は泣きそうになる。



「泣くな、桜乃。」


柳が桜乃を抱きしめる。
優しく、精一杯想いを抱きしめる様に、強く抱きしめた。



「相変わらず小さいな、お前は。」


「蓮二が大きいんだよ...」


頬を膨らます桜乃だが、柳の背中に腕を回す。

あの頃と比べると、身長は伸びたものの、キスをする時も、今だに柳には届かない。

どんなに頑張って背伸びをしても。

けれど。あの頃とは違う。


こんなに近くに柳を感じる事が出来る。




「もう少しだけ、このままでいて?」








ずっと。

二人は、
来年もその先も、ここで待ち合わせしてる。

私は、
ずっとずっと来年もその先も、ここであなたを待っている。




何百年も先もずっと。

この先、手を離す事があっても、
私はここで―――――。





大人になった私に。
次の自分に伝えたい。



愛する人へ。




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