上から君が降ってきた。
□三
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さて例の悪漢を追っ払って町中を歩くこと暫し。相変わらず山水は口説かれている。相棒も嫌がってるし私も嫌になってきたからちょっと道を変えることにした。人の少ない裏道を選び足を進めて行く。なんて快適なんだろう。歩きやすくて素敵。山水も人が減ったことに喜んでいるらしく足取りが軽くなった。
だがしかしこういう道にはお約束があってだな。
「……」
山水の耳がピクリと動いた。どうやら誰かが着いてきているようだ。なんだろ、馬好きな皆さんかな?それともさっき追っ払った悪漢のお仲間か?それとも、もっと別の何かか。
そうこうしている間に前方からも何かの気配。大人数だ。私が立ち止まると、色んな方向からぞろぞろと人がやってきた。どいつもこいつも厳つい顔してやがるぜまったくよ。どう見ても馬好きには見えん。内心ヘッとか思いながら後頭部をガリガリ掻いてみる。
「…何か御用で?」
「さっきはよくもうちのもんに手ェ出してくれたな」
「うちのもん…?」
野太い声に目を向けるとその後ろにさっきの悪漢がいる。私が目を向けると、ひっと怯えた様子を見せた。怯えるくらいなら来なけりゃいいのに。
まぁ、いい。
とにかくこの人達は落とし前を付けたいんだろう。私は山水の手綱を放して腕を組んだ。
「それで?落とし前付けるべく皆さんでぞろぞろと?」
「話が分かるな…だが単に落とし前つけてェってわけじゃない」
「…?」
「…お姉さんよ、あんた女の身でありながらいい面構えしてやがる…どうだ?俺らの仲間になんねェか?」
「…残念ですが私もう既にとある家に仕えてますので。喜んで辞退させていただきます」
「はは…そうかよ…なら仕方ない…予定通り落とし前つけさせてもらうぜ!」
よっしゃコラァァァ!!みたいな勢いで向かってきた大勢に私は構えると体勢を低くしてまず正面の男を蹴り飛ばす。続いて左右からきた二人の拳を避けて同志討ち。すると二人が地に倒れこんで痛がってる横から手が伸ばされる。それを払って顎をぶん殴り蹴り飛ばした。
まだまだ相手は多い。私は一度距離を取る。
「…ヒン!」
「え?」
意味深に相棒がこっちを見たから目を向けると、相棒はこれまた意味深に一鳴き。なんなんだお前。お前も加わりたいの?と内心思ったらなになにどうしたのお前。何処行くの相棒。突如駆け出した山水に私も皆さんもちょっと驚く。山水はそれに目もくれず、人通りの多い道へと駆けて行った。
おいおい。
「ハッ…テメェの馬は余程の臆病らしいなァ…この状況で逃げ出すたァ…」
いや、アイツは銃弾飛び交う中でもびゅんびゅん走ってく馬なんですよ。本当は。
なんて言えない。
なんだろう、なんか考えでもあんのかな。まぁ逃げるなら逃げてもいいんだけどさ。危ないし。
私は辺りを見渡す。するといつの間にか厳つい集団は手に得物を持ってらっしゃった。小刀やら長刀やら。正直素手なら山水が暴れれば怯んだりするけど、武器持ってんならうっかり刺されちゃうかもしれないし。それでアイツが怪我すると私は困るし。
ま、これはよしとしよう。
皆さんが楽しげに笑ってる中、私はふぅと息を吐いた。そうして腰の刀を抜く。私が刀を抜いたことを確認すると、彼らは一斉に襲いかかってきた。