HikaGo.S

□許す代わりに
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昨日、加賀くんは
授業中にケータイが鳴って
先生に没収されました


私はすぐ後ろの席から
全部、見てました











今日も加賀くんは
授業中ずっと寝てて
おかげで黒板がよく見えます


私が窓際の一番後ろで
加賀くんがその一つ前の席



将棋部主将で頭もよくて
これだけ授業中寝てても
成績は常にトップクラス

高校もかなり上の所を受けるみたいで


私なんかとは、比べ物にならないくらい
すごい人


だから、ほとんど話したこともなくて




給食で班にするとき
必然的に隣の机になるけど

ほとんど話したことなくて






「みかん食わね-ならもらってもいいか?」

『あ…うん…。どうぞ…』



会話って、これくらい












もっと話してみたいと思っても
話せる話題もなくて


あ-あ。
クラスの女の子たちみたいに
気軽に話しかけられたらいいのにな

って


いつも後ろの席から思ってます


















♪♪〜♪〜〜〜♪♪


















突然、教室に響いた着信音

それは、明らかに後ろの方の席からで







ていうか

私の席からというか

私の机からで




一気に血の気が引いた






マナーモードにするの忘れてた!!!!!











「おい誰だ!!今すぐ出せ!!!」














小心者の私は

先生の怒声に

何も言えなくなった


























「すんませ-ん」















頭をかきながら

机から頭を上げる加賀くん






ポケットから出したのは

昨日の放課後に返してもらったケータイ





「なんだ加賀!!
 お前昨日も没収されたらしいじゃないか!!」

「電源切んの忘れてたんスよ」

「放課後取りに来い!!」











なんで



なんで、かばってくれたの














先生にケータイを渡しに行って

席に戻るとき


加賀くんと目が合った






加賀くんは


いたずらっこみたいに


舌を出してた





























『ほんっとうにごめんなさい!!!』





授業が終わって真っ先に謝った




『すぐに名乗ればよかったんだけど…』



加賀くんの顔を見るのが怖くて
頭を上げられない




『その……あの…』



言葉も出てこない









「ったくよ。
 連続で没収はきついよな」


『じゃ……じゃあどうして…』


「そんなんオレの勝手だろ」


『ご…ごめんなさい…』






会話したいと思ってた加賀くんと

まさかこんな会話をするなんて










「寝てるの起こされるわ
 ケータイ没収されるわ
 どうしたもんかねぇ」



『あ…あの……ごめんなさい…』




謝ることしかできなくて







「ちょっと、耳貸しな」






人差し指をちょいちょいってして


耳を要求してきた






なにか脅されるんじゃないかって


ぶたれるんじゃないかって


すごく硬く、耳を貸した


























チュ

























耳を貸したはずなのに






ほっぺたに感触があった


















『……へ…?』












と思ったら




おでこにデコピンされた















『いった-い…!!』




「お前は油断しすぎなんだよ」











もうなにがなんだかわからないけど




これで許してくれるなら





むしろ、私には嬉しいことで。










誰も知らない、

教室の隅っこで起きた大事件









その行動の本当の意図を知るのは



もう少し、先のお話でした








END

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