四国四兄弟
□ただのツンデレ
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俺にとって彼女は恋人ではない。友人でもない。何なのかよくわからないというのが一番正しい。
喧嘩することも少なくないものの、一緒に出かけることもある。
でも恋人ではない気がする。どこから恋人と言えるラインなのかは俺の知ったことではないから。
「そうですか。リア充はさっさと爆発してから結婚すればいいんですよ」
今日も忙しそうな東京は、俺の話を素で聞き流していた。
「爆発したら結婚できねえだろうが」
「ツッコむべきところはそこじゃないと思うんですけど…」
埼玉にそう言われても、他に東京の発言でおかしいと思われるところはない。
首を傾げていたら、千葉が「埼玉、顔の良さと頭の良さは必ずしも比例しねえから、な?」と俺をチラ見しながら埼玉に助言した。喧嘩売ってんのか。
「はあ…私は神奈川さんの惚気話なんかこれっぽっちも聞きたくないんですけど。なんですかこれ、新しい形の職場いじめですか?」
「惚気てねえよ。お前が聞いてくるから答えただけだろ」
東京が「付き合ってるんですか?」なんて聞いてこなかったら、俺だって何も言わなかった。
よく考えてみれば東京以外にも埼玉と千葉がいるのだから、今言ったことは全部聞かれていたというわけで。
急にこの場から逃げ出したい衝動にかられた。
「おっと、逃げても無駄ですよ」
「っ!?」
こっそり逃げようとしたら、目にもとまらぬ速さで東京に腕をつかまれた。こいつ、デキる……!
というかその無駄な能力はどこで磨いたんだよ。聞いたところで無駄なのはわかっているから聞かねえけど。
「仕事が終わってないですから、そこまで深く聞くつもりはありません。でも一つだけ聞かせてください」
「……何だ?」
妙に神妙な顔をして話を切り出す東京に、俺も思わず身構えた。
「好きなんですか?」
誰を、というのは聞き返さなくてもわかる。
わかっていても、答えられなかった。そういった対象として見ようとしたことがなかったからだろう。
「別に」
俺が答えを濁しても、東京はそれ以上何も言わなかった。