四国四兄弟
□白兎のお誘い
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ありふれたパーティーだった。時に冗談を言いながら、時にビジネスライクな話もするような。
なんとなく参加しただけなのに、他の参加者はそう思わなかったらしく、なかなか話から解放してもらえなかった。
つくづく、俺はこういう場に向いていないと思う。きっちりした格好とか、お世辞とか、そういう表面的なことが苦手なのだから、仕方ないだろうけど。
思ったよりも疲れたので、さっさと帰ろうとしたら、小さな力でスーツの裾を引っ張られた。
「?」
振り返ると、そこには鳥取がいた。
「もう…帰るんですか?」
「まあな。鳥取は帰らんのか?」
「えっと…その…」
鳥取は但馬とは仲がいいのに、俺に対してはどことなくよそよそしかった。それが不満とか言うつもりはないけれど、なんとなく怖がられているのは伝わってくるから、居心地は悪い。
「あー、別に答えたくないなら答えんでええわ。俺がどうこう言うことでもないしな。但馬ならその辺おったんちゃうか」
「あ…そうじゃなくて、その」
おどおどしながら何かを言おうとする鳥取を見ていたら、昔の神戸を思い出した。俺の言うことにびくびくしていた、幼かった、子供。
でも、鳥取は子供ではないし、本当にいつもおどおどしているわけでもない。親しい相手には気安く話すことだってしている。但馬とか、島根とか。当然、俺は違う。
それなのに、鳥取は思いがけないことを口にした。
「たまには、播磨さんと…その、お話、したくて」
一瞬、耳を疑った。
「話?」
「え、えっと、近くに美味しい居酒屋さんがあるらしくて、」
「お前飲めるんか?」
ちょっとしたからかいのつもりで聞いたら、「の、のの飲めま、す…!」と少しすねたように言い返してきた。珍しいこともあるものだ。
「じゃあ、ほんまかどうか飲んで確認するか」
「は、はい!」
今日は、いい酒が飲めそうだ。