四国四兄弟
□If you find your way,
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神戸と遊びたくなって、東京の家に来た。
近ごろの騒動のせいか、慌ただしく見える。何回も来たおかげで、彼女がどの部屋にいるか、見当はついた。
他の部屋よりも何となく小綺麗で、細かい装飾が目を引く扉の、向こう。
「神戸、遊ぼ」
その部屋に静かに座りこんでいる彼女に声をかけると、小さな肩がぴくりと跳ねた。ゆっくりと振り返る神戸が、ひどく怯えているのが見てとれる。
「どうしたん」
「…、と、東京、が、…」
「東京?」
「わ、私…」
何かあったのは確かみたいだけど、今の状態の神戸から事情を聞くことは多分できないだろう。泣いていたのか、腫れている目が痛々しい。
「よくわからんけど、泣くことないやろ。東京もしっかりしとるし」
私の慰めに、神戸は大きく首を振った。駄々をこねる子供のように。
「ち、がう…っ。私、もう、出なきゃ、いけない」
「出る、って…この家を?」
少しためらったあと、彼女は小さく頷いた。
「はりま、さん、と、たんばさん、たじまさん、と一緒になるって、東京が、言ってた」
「…へ?」
ぐすぐすと泣いている神戸は、余程不安なのか、異国の大きな人形を握りしめていた。
「そんな、ん…いきなり、言われても、…」
彼女の体は震えて、瞳には涙が溢れそうになっていた。神戸に、これからどんな困難が待っているのか、私には見当もつかない。私ができることなど何もないけれど、ただ今だけは、彼女の不安を受け止めたいと思う。
「神戸、泣いとる暇はないで」
「…う、っ」
「強くならなあかん、ってことはわかってるやろ?」
酷なことだというのは百も承知だ。でも、いつかこの日が来るのはわかりきっていた。
「嫌や、いや、っ…うちは、そんなん」
「じゃあ、うちがいる。それなら安心やろ?」
優しくあやすように背中を叩くと、泣きつかれたのか、神戸の力が抜けたのを感じた。寝てしまったらしい。
「……それにしても、播磨と丹波と但馬か…」
大変な思いをするのは、神戸だけではないだろう。今まで他人同然だった者同士が一緒になるのだから。
でも、もしかしたら、それこそが彼女を大きく変えるかもしれない。その未来を期待している自分がいるのも、確かだった。