四国四兄弟

□フラグ乱立なう。
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 冬だから寒いのは当然ですが、この部屋の空気は寒いというより痛いです。突き刺さる視線(男からの)、無言の圧力。
 予定では今頃、家でマッサージチェアに座りつつ明日の仕事のことを思案するはずだったのですが。私の数少ないオアシスタイムをこんな理不尽な会話で潰されるとは。運命は残酷ですね。

「証言の真偽は正直どうでもいい。俺が一番納得できねえのは、これだけハーレム作っといて二次元に走るお前の態度だ」
「神奈川さん、私はハーレムを作った覚えは微塵もないですよ」

「まあまあ神奈川落ち着け。俺も半信半疑だしな。一時の気の迷いだろ」
 千葉さん…それ、フォローになってません。


「今さらですけど、どうして私だけ責められてるのか理解しがたいです。私以上にハーレム作ってる方なら、今私の目の前にいるじゃないですか!」

 前からずっと言いたいと思いつつ我慢していましたが、さすがにここまで言われたら私だって黙っていられません。

「は? 俺?」
「当然でしょう、神奈川さん。私の情報網を侮ってはいけません。あなたの噂はいろいろと聞いてますよ」
 
 仕事が多いのは我慢できますが、すぐそこのご近所さんは休日ハーレム作ってうはうは状態だなんて(しかもイケメン)、そんな現実認めません。認めませんから。
 ああ、なぜか急に涙が出てきました。

「具体的に言うと、静岡さん神戸さん新潟さん福岡さんあと秋田さんですね。他にも聞いてますけど。休日ごとに静岡さん宅へ行くあなたの目撃情報は多いです。ロリコンは二次元にとどめておいてくださいね。あと神戸さんとは何らかのイベントごとにデートに行ってるとかいう情報もありますし、去年のバレンタインにチョコもらったらしいですね。あ、静岡さんからももらってるようで。リア充乙です。あと新潟さんをナンパしたと? これは本当なら懲罰ものだと思いますよ。福岡さんともしょっちゅう飲みに行ってて、この間は口説いたとか。佐賀さんが憤慨してましたよ全く。秋田さんの花火大会に一人で行ったとか聞きましたけど、秋田さんに何かしてませんよねそうと言ってください…もう勘弁してくださいよこんな情報聞きたくないのに耳に入って来ちゃうんですから! もう!」

 一息に言い終えて周りを見渡すと、なぜか皆さん呆然としておられました。あれ、何かまずいこと言いましたかね。

「……神奈川、くわしく話聞かせろ」
 千葉さんの目が据わっている…ですと…。飲み会以外で初めて見ました。
「おいちょっと待て弁解させろって! 今の東京の言い方だと、まるで俺がどうしようもない女たらしみたいじゃねえか」 
「じゃあ事実とは違うんですか?」
 さいたまさんの つめたい まなざし ! こうかは ばつぐんだ !
 
 それでもそこは神奈川さん。立ち直りもそこそこ早いです。

「ちげーよ! だから、静岡の家に行くのは休みやすいからっていうのと、プリン食いに行ったり…大した用事じゃねえよ。あとロリコンとか言うな。神戸と一緒に出かけることはあってもデートじゃねえし。チョコとか何とか言ってたけど、静岡も神戸も義理チョコっつってた。新潟をナンパはしたけど、お前に激怒される云われはねえだろ。福岡が可愛いのは事実だろ? 事実を事実として言って何か問題あんのか? 秋田には何もしてねえよ。してたら今生きてねえだろうが」

 わーお。見事なフラグバキバキコースを選んでいただきありがとうございます。
 それで言い逃れできたと思ったら大間違いですけども。

「私はそれで納得できるほど単純じゃないんですよ」
「ふん、それならお前が納得するまで説明してやるよ。それで文句ねえだろ」
「私より、彼ら二人を納得させるのが至難の業だと思いますけど」
「へ」

 神奈川さん、今横を向いてはいけません。向いたら、

「神奈川、俺にもその話詳しく聞かせてくれるよな? 東京も。大体お前らモテすぎなんだよ。もっとありがたみに気づけ」
「言っときますけど、僕たちはそんな簡単に納得しませんから」

 千葉さんと埼玉さんの尋問が待ち構えてますから。
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