四国四兄弟
□twitterお題で小説
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久しぶりに東京のところで飲み会をした。
酒に強いメンツと弱いメンツは割とはっきり分かれていて、前者は止まることなく飲み続け、後者は酔い潰れるか、その前に帰っていった。
飲むのに飽きたころに、ふと東京の倉庫の整頓でもして驚かせてやろうと思いついた。正月はちょっと(いろいろと)びっくりしたけど、今なら何が出てきても大丈夫だと思うし。
我ながらなかなかの妙案を思いついたものだと自画自賛しつつ、倉庫へ向かった。
そこはやけに広くて、室内なのに迷路のように複雑な構造をしていた。
いつもだったら入りたくないけど(迷うのがわかっているから)、目的がちゃんとある今は、むしろ何でも来いと思えるくらいに大胆に構えられる。早速足元の書類に手をのばした時、突然扉の方から大きな物音がした。
「!?」
おそるおそる扉へ目を向けると、そこに千葉が立っていた。
相当酒を飲んだのか、足どりがおぼつかない。なんでここに来たのかはわからないけど、ここまで泥酔していたら誰かに頼んで送ってもらった方がいいような気がした。
「ちょ、大丈夫なん?」
「…………ん」
千葉は頷いて、傍の壁にもたれかかってずるずると座りこんだ。どう見ても大丈夫ではないだろう。とりあえず、誰かを呼ぶべきか。
「誰か呼んでくるから、待っ…!?」
待っとって、と言うよりも先に、唐突に抱き寄せられた。お互い何も言わず、ただ沈黙だけが流れる。
もし今誰かがここに来たら、なんて言い訳したらいいんだろう。別に普段はそこまで関わりあいもないと思われてるだろうし。実際そうだけど。
「…あの、放して」
できるだけ冷静に言って、さりげなく彼の腕をふりほどこうとしてみた。腕力に差があるなんて思いたくないけど、無理だった。ちょっと悔しい。
「放し…」
「無理」
「嫌」とかではなく「無理」。駄々をこねる子供みたいな言い方に、思わず笑ってしまった。
「しゃあないなあ」
少しくらいはいいかと諦めて、彼の背中に腕を回す。
お願いだから、今だけは、誰もここに来ませんように。