四国四兄弟

□twitterお題で小説
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 カタン、と小さく音が響いた。絡めた指は熱い。風呂場に停滞している熱気が、頭をぼうっとさせる。
 私の着ているキャミソールも、彼が着ているシャツも、水に濡れてしまって重くなってしまった。どれくらい時間が経ったんだろうか。

「……すいません」

 不意に彼が謝る。こうなったのはただの偶然で、他意はないんだとでも言いたげに。

「謝らないでください」

 偶然とかそんな簡単に片づけてほしくはない。むしろずっと覚えていてほしいくらい。
 私は四六時中貴方のことばっかり考えてるんですから、たまにはいいじゃないですか? 東京さん。
 意地悪にそう言ってみたくなったけど、やっぱりやめた。彼を困らせたくはない。手のかからない女の子と思われたい。

「やっぱり、帰った方がいいと思います。きっと、いろんな人が心配してますよ」

 そうやってまた子供扱い。私はもう昔とは違うってこと、いい加減認めてほしい。もしかして本当はわかってるのに、わざと見て見ぬふりしてたり? 

「嫌です」

 きっぱり言い放ったら、案の定「どうして」と聞き返された。聞きながら、彼の表情は「聞きたくない」と訴えている。
 ああやっぱり、答えがわかってるんだ。

「東京さんのことが、好きだからです」

 言ったらダメだと思っていた。口に出したら何かが終わってしまうような、そんな気がして。けど、言ってみたらなんてことはない。
 いつだって心の中で思っていたことだ。今更変わることなんてありえない。

「…諦めた方がいいですよ」
「嫌です」
「そう、ですか」

 「送りますから」とか「さすがに泊めるのは無理です」とか、どうにかして私を帰らせようとする彼に苛立って、思わずシャツをつかんで引き寄せて、無理矢理キスをした。
 すぐ息が苦しくなる。慣れてないから、仕方ないと言えば仕方ないけど。離れようとした時、「やっぱり、」と小さく彼が呟いた。



「服が乾くまでは、仕方ないですね」



 その言葉に頷いて、彼の濡れた髪を撫でる。私の髪の匂いがちょっとだけうつっていて、いっそ同じになればいいのにと思った。
 服が乾くまでに、そうなったならいい。  
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