四国四兄弟

□戦隊CPったーで小説
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 どうしてこうなった。

 最初に罰ゲームなどと言いだしたのは、酔っ払った播磨だったような気がする。
 酒の席での余興に罰ゲームもないだろうと否定したのは自分だけで、後のメンバーは予想外に乗り気だった。
 それがこの状況を生み出したのだから笑えない。


「……じゃあ、但馬さん。女装してください」


 徳島に言われて、目の前のメイド服を手に取る。
 俺は今まで数々の修羅場をくぐりぬけてきたが、ここまで行き詰まったのは久しぶりだ。言われるまま女装しても恥、女装しなければブーイング。
 今ほど女であればよかったのにと思ったことはない。神戸や淡路や丹波なら(丹波は一応男だったか)笑ってすまされるだろうが、俺や播磨だと空気が沈むに決まっている。


「さっさと着ればすぐ済むって」
「いいからはよ着ろや」
「待ちくたびれたわー」


 身内だというのに、彼らから野次の飛んでくる回数が一番多いのはどうしてだろうか。


「い、いやこれ無理やって……」


 着たら俺の尊厳的な大切なものが失われる気がする。
 ここは彼らが飽きて他のことに目を向けるのを待つしかない、と思って顔を上げると、徳島が俺の肩を叩いた。
 徳島のことだ、きっとさりげなく俺を助ける考えがあるのだろう。


「一人で着替えられないんやったら、僕手伝いますけど」


 俺が助けてほしかったのはそっちではない。

 
「そうやなくて、この状況を」
「ああ、皆に生着替え見られたくないんですね。じゃあ但馬さんが目隠しして着替えれば…」
「何の解決にもなってないやろ」


 思わず素でツッコんでしまった。
 ここでどうにか皆の注意をそらすためには、やはり代役を頼むのが一番だ。
 神戸や播磨あたりだったら、言いくるめば着てくれるかもしれない。
 丹波は口車には簡単に乗ってくれなさそうだし、淡路は寝ているから無理だ。


「神戸、播磨、俺の代わりに」
「但馬が着た後やったら着てもええよ」
「ええから着ろって」


 俺を助ける気は全くないらしい。これは、俺に対する試練なのか。
 震える手でメイド服をつかんで、瞬時にそれを着た。そしてできるだけ早くそれを脱いでパーカーを再び着る。
 播磨たちは目で追えなかったらしく、ぽかんとしていた。これで一応着たことになるし、恥も一瞬で済んだ。
 我ながらなかなかいい判断ができたのではないかと思っていたら、徳島が俺に申し訳なさそうに言った。



「すいません。奇跡的に但馬さんのメイド姿、写真に撮れました」
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